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2025年4月の「4号特例縮小」、2030年の「ZEH水準の省エネ適合義務化」と、新築住宅にも制度の高い構造基準が求められます。こうした変化に対応するため、「許容応力度計算」を一から学ぶ講座を開講します。
9月の開講にあたり、塾長の鈴木淳さん(ネイティブディメンションズ一級建築士事務所 代表)にロングインタビューを受けていただきました。前編では木造住宅の構造計算の体系の変化や「許容応力度計算による耐震等級3」が将来的にどのような位置づけになるのか、実務者の立場で詳しくお話いただきました。
◆質問一覧◆
Q1 木造住宅の構造計算にはどのようなものがあるでしょう?
Q2 2025年4月の建築基準法改正で、住宅の構造計算はどう変わるでしょうか?
Q3 耐震等級取得を目指す場合、性能表示計算と許容応力度計算のどちらを選ぶべきですか?
ネイティブディメンションズ一級建築士事務所[新潟県新潟市]
1973年新潟市生まれ。
工務店、ゼネコンなどを経て2008年に独立。
換気を含めた熱損失合計を100W/K程度に設定した外皮性能と、許容応力度計算による多雪区域耐震等級2以上を組み合わせた延べ床面積20坪前後の住宅に特化した設計を行っている。
2030年には「許容応力度計算が標準に」
法改正が迫る住宅構造計算業務の大改革
Q1 木造住宅の構造計算にはどのようなものがあるでしょう?
木造住宅であれば、1)仕様規定(壁量計算等)、2)住宅性能表示計算、3)許容応力度計算の3つがあります。
1)仕様規定(壁量計算等)は、住宅に求められる構造強度を簡易的に計算するため建築基準法で定められた計算法です。「4号特例の縮小」により2025年4月1日からは最低限この計算が求められます。
2)住宅性能表示計算は、住宅品確法で定められた住宅性能表示制度のなかで耐震等級を評価するための計算法です。1)の仕様規定をベースにした住宅性能表示独自の壁量計算に加えて床倍率や基礎などの評価項目が付け加えられ、最低限の基準からどれくらい性能を高められているかを評価できます。
これに対して3)許容応力度計算は、一般的な住宅の構造検討手法としては最も詳細な計算法です。確認申請から耐震等級まで対応できるオールマイティーの計算法で、2)性能表示計算よりも耐震等級の評価基準が厳しいため、構造の安全性を求める住まい手のあいだで「許容応力度計算による耐震等級3」が構造性能の最高等級として注目されています。
Q2 2025年4月の建築基準法改正で、住宅の構造計算はどう変わるでしょうか?
2025年4月に施行される「4号特例の縮小」は、住宅の構造計算省略特例が大幅に制限され、特例の範囲が現状の「木造2階建て、床面積500平米以下」から「木造平屋建て、床面積200平米以下」へと大幅に限定されます。これにより2階建ての木造住宅であればほぼ全て、最低でも1)建築基準法の仕様規定(壁量計算)を満たしたうえで、図面と書類の提出が求められます。
2025年4月はこの「4号特例の縮小」と同時に「令46条壁量計算の変更」が施行されます。「令46条壁量計算の変更」はソーラーパネルの有無、階高や屋根、外壁、断熱材の仕様によって必要壁量が変更される、というものです。また積雪地における必要壁量基準も追加されるということですので、さらに厳しくなることが予想されます。
つまり2025年4月の法改正以降、1)の仕様規定は計算が複雑化して、揃えるべき図面や書類の枚数が一気に多くなります。書類申請の手間が今より何倍にも増えるのに耐震等級の認定が取得できないのであれば、実用的な計算手法でなくなる、と私は捉えています。
さらに2)性能表示計算においても今後必要壁量の基準が見直される予定です。また2025年4月以降は、許容応力度計算を行うと新しい基準での壁量計算が不要になり、計算の二度手間を省くことができるようになります。それが私個人的に一定以上の断熱・耐震性を有する家づくりを手掛ける工務店にとって、住宅の構造計算業務は実質的に「許容応力度計算」一択になると確信している理由です。
Q3 耐震等級取得を目指す場合、性能表示計算と許容応力度計算のどちらを選ぶべきですか?
今度は耐震等級を取得することを前提に、2)性能表示計算と3)許容応力度計算の違いを比較してみましょう。
2)性能表示計算は、壁量計算と同様、物件の個別条件を詳細に把握せず、必要壁量の係数表や、横架材や基礎のスパン表を用いて計算します。これによって個別物件の条件設定をほとんど省けて手間が少ないのがメリットです。
これに対し3)許容応力度計算は、性能表示計算よりも手間が増える一方で、建物強度を正確に検証できるのが大きなメリットです。3)許容応力度計算は、建物の断面構成と使用面積によって精細に建物荷重を積算して、そのうえで各構造材がこれらの荷重負担を支えられる太さ・強度になっているか、その応力を一本ずつ検討します。
建物の重さ、積載荷重、地域特有の台風圧や積雪量など、その住宅1棟ごとに必要な構造強度を個別算定し、それに耐える構造強度を確保し、構造安全性について根拠のある説明ができることは、施主との信頼関係をつくるうえで非常に重要な要素になります。これは「性能表示計算」の計算手間を省くメリットを大きく上回る価値があります。
また見逃してはいけないのは、構造計算ソフトの急速な進化です。
「許容応力度計算」の構造計算書は住宅1物件でも500ページぐらいの厚みになります。かつては構造部材1本の応力検証をほぼ手計算で行っており、NGの検出も非常に煩雑でした。
ところが近年の構造計算ソフトのビジュアル化が進み、構造計算の肝になる力の流れを3次元イラストやアニメーションでわかりやすく表現できるようになりました。これにより必要部材の算出や応力の検定が簡単なボタン操作で瞬時にできるようになり、許容応力度計算へのハードルがとても下がったという印象を持っています。
もし「4号特例縮小」をきっかけに、これから壁量計算を学ぶのであれば、私は一気に許容応力度計算を学んでしまうことをお勧めしています。
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