90点は0点である
9合目まで登った=無登頂と同じ
担当者とお客様の良好な人間関係が効いたという話もよく聞くが、それもそういう部分を大切な判断材料としてくれるお客様の価値観に依存するものであり、担当営業パーソンの人間力だけでお客様の意思決定をコントロールできているわけではないだろう。
それが証拠に、「人のよい営業」の商談ほど長期戦・消耗戦になりがちだ。 いい人だから(←決して褒めていない)最終の2社に残ることまではできるのだが、最後の一騎打ちではアッサリ負けることが多い。
「商品力」+「人間力」程度の武器だけでは勝ちにくいのだ。
別に人間力など糞くらえだと言っているわけではない。生涯で一番高額な商品を売っているのだから、担当者の人間力が高いことなど当然の話で、そうでない旧式の営業パーソンが住宅を売っていることがアンバランスなだけの話だ。
人間性がよい上に、さらに売るテクニックを持っていて、実際に売るのがプロの営業の条件である。
幾つもの山々を9合目まで登ったところで頂を踏破しなければ記録は全て無登頂なのと同じで、契約直前まで到達した商談が幾つあろうが、受注できなければ結果はゼロだ。
にも関わらず「9合目までは行ったんですが…」と悔しがりつつも90点は取れたという間違った自己評価のまま再び山頂を目指すから、商品力を向上させた割には受注に結び付かないのだ。
人間力は当然のこととして、「商品力」+「営業力」を併せ持って初めて鬼に金棒の状態となるのだが、「商品力」という金棒が磨かれていく一方で、「営業力」という鬼の成長がなければ、金棒を宣伝するための「集客力」も含め、その工務店の企業努力はとても非効率だと断言することができる。
お客様の全てのリクエストに応え終わった地点がゴール地点、というような顧客主導の契約締結ではなく、展開を予測しながら商談を優位に導いていくのがプロの営業の仕事だ。
商品力で差別化を図る時代の次には、さまざまな展開を予測しながら戦うチェスプレイヤーのように、狙い通りに受注を「チェックメイト」できる「真の営業力」を持つ工務店と営業パーソンだけが生き残れる時代がやってくるはずだ。
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