「一気通貫型経営」
「一気通貫型経営」とは工務店の「ヒト・モノ・コト」、つまりスタッフ、家づくり、理念を一貫性のある状態にブランディングすることで企業価値を高める
という考え方です。
どこの業界でも特有の慣習や考え方はありますが、当然住宅業界にも独特の考え方が存在します。地域工務店から大手ハウスメーカーに至るまで、住宅業界の多くはまだまだ顧客志向性が低く、労働集約的な古い体質であることは否めません。住宅業界は全般的に、企業イメージ・住宅デザイン・働いているスタッフにかなりのギャップが見られるケースがあります。ホテルやアパレルの何百倍もする単価で、人生で最も大切であると言っても過言ではない「家づくり」に携わっているのにも拘わらず、です。「今月のタマ(契約見込み客)はないのか」「去年は契約を何棟獲ったの?」といった生々しい会話をしている工務店も確実に残っています。そういう会社に限って、表向きには「お客様第一主義」と宣伝していたりします。
他にも、例えば南欧風の外観のかわいい建物を見学してみたら、そこには南欧のことなどまったく知らないゴリゴリの営業マンがいて、室内は何の変哲もない日本の家だったりします。
このように表向きと現実が大きく食い違うケースは、単価が高くなればなるほど、また感度が高くなればなるほど他業界ではあまり見られませんが、単価が何千万円もするというのに住宅業界では日常茶飯事です。
我々は知らないうちにこんなギャップを生む仕事を会社ぐるみで行っています。
「ヒト・モノ・コト」のイメージを統一させることは、客観的に見れば至極当たり前なのですが、何気なく仕事をしていると気付かないうちにズレが発生します。こうなると会社の魅力は半減しますので、「会わずして失注」しているケースもあるはずです。新築住宅減少時代に、まずは「ヒト・モノ・コト」に一貫性を持たせる必要があるのではないかと強く感じる次第です。
これはマーケティングの世界でいう「CI(コーポレート・アイデンティティ)」「VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)」とほぼ同じ範疇です。企業価値を高めるため、自社の目的目標を経営理念などで明確化し、向かう方向性・実現したいことを分かりやすくして社員を中心に広く社会に浸透させていくものです。
自社の存在意義を高める活動を簡単な手順で示すと
・経営理念の確立
・経営理念に共感し実践する人の育成
・家づくりを中心としたイメージの統一
—となります。まずは経営理念を明確化し、お飾りでなく本気で実践するという意志を持ったものにする。経営理念が不明瞭ですと、会社の存在意義が失われ、働く人が何を基準に仕事をするべきかが曖昧になってしまいます。
したがって、まず一番にすべきは、売れるモノをつくることではなく、「わかりやすい経営理念の確立」だと考えます。それから経営理念に共感する人を集め、経営理念に則した人づくりをする。同時に自社の理念に適した間取りやデザイン性、素材や性能の家づくりをすることで「ヒト・モノ・コト」が統一された企業づくりがなされるのです。
極端に言うと住宅は、設計図面が同じであれば、施工業者がどこであっても完成する建物に大きな差は生まれません。確かに考え方からデザインが生まれ、きめ細かな工事がなされるのですが、「氷山の一角」のように表面に見えているものだけでどこまで多くの方々に理解してもらえるかは未知数です。
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