プロローグ
はじめまして。私は山口県防府市という人口12万人足らずの田舎町で工務店を経営しております。大学を卒業後、5年間銀行マンとして働き、その後2000年に故郷の山口県へUターン、2002年に29歳で工務店を引き継ぎました。末弟でしたので家業を継ぐつもりは毛頭なく、従って建築知識は無知に等しい状態からのスタートでしたが、事業承継して何とか14年目を迎えます。この間、新築住宅の完工棟数は13棟から43棟へ、契約棟数は23棟から51棟へと、緩やかに右肩上がりをしました。
先輩経営者の皆さまをはじめ、多くの方々から学びを得ながら、何とか工務店経営を続けて来られたことには、感謝の気持ちでいっぱいです。そして心ある皆さまの教えに従い、単に経営数値だけではなく、明確な経営理念に基づいた正しい家づくり・人づくり・会社づくりの成果が出てきていることは、大きな財産でもあります。
さて、少子高齢化による人口減や家余りなどの要因から我が国の住宅着工棟数は減少傾向にあり、長期的には30~50%の減少が予想されているのは周知のとおりです[グラフ1]。
[グラフ1]
短期的には消費税率引上げ後から一服し、消費税10%への引上げに向けて需要回復傾向であるのかもしれませんが、消費税引上げ後の落ち込みや金利上昇懸念、職人不足や材料高などの不安材料を抱えながらの工務店経営は極めて難しい状況です。その他個社別に事業承継や人材育成など多くの問題を抱えておられる工務店も少なくないはずです。
2000年からの15年間は「大量生産・大量消費」の時代から大きくシフトチェンジをし「量から質へ」「モノからコトへ」といった動きが現実化した期間でした。
今後はそれがさらに加速し、より高性能な家づくりがスタンダードになり、また住まいと健康との関連性が医学的に立証されるなどの動きがあります。このなかで「安かろう悪かろう」の住宅は勢いをなくし、高性能住宅をしっかりつくる時代が来るのではないかと考えています。加えて、住み手のライフスタイルに適した多様性のある家づくりも求められています。まさに「量から質へ、質から上質へ」と向かっていると感じます。
地域工務店が進むべき方向性
こんな状況のなかで、具体的に何をどのように進めれば良いかは経営者にとって難しい選択の連続です。特に地域工務店は淘汰の時代と言われ、将来的に更に厳しい環境が待ち受けている訳ですが、地域に密着した活動を行い、大変重要な役割を担っている、なくてはならない地域工務店も少なくありません。
地域工務店淘汰の時代に進むべき方向性を探るために、「ライフスタイル型工務店」への転換を目指す勉強会を9月から開催する予定です。明確な経営理念を持ち正しい家づくりをしておられる、(またはそのようにやっていきたい)特に年間完工棟数30棟までの地域工務店経営者に向けて、地域工務店の経営者としての経験・観点から、将来を見据えた工務店経営の在り方を共有し伝え合う場を設けようと考えました。ノウハウ提供型のコンサルティング会社のように手品のような手法がある訳ではありませんが(笑)、かなり実践的かつ現実的な勉強会になると確信しています(勉強会の詳細は次回連載時)。では、勉強会で予定している内容の一部をお伝えします。
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