「住宅産業大予測フォーラム2017」特別インタビュー
カリスマが伝授する
縮む市場を生き抜くトップのメンタリティー
若者に夢を語り、顧客に情熱を持って伝えよう
A andLive(エーアンドライブ)
代表取締役 髙田 明氏(株式会社ジャパネットたかた前社長)
【プロフィール】
1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーに就職し通訳として海外駐在を経験。74年に父親が経営するカメラ店に入社。86年に「たかた」として分離独立。99年に現社名に変更。90年にラジオでショッピングを行ったのを機に全国へネットワークを広げ、その後、テレビ、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや通販サイトなどでの通販事業を展開。2012年には東京にオフィスとテレビスタジオを新たな拠点として開設。2015年1月に「ジャパネットたかた」代表を退任し、同時に「A and Live」設立。社名の由来は、今を生き生きと生きる世の中にしたいという想いから
本格化する超高齢化・人口減少社会は、あらゆる産業に大きなインパクトをもたらし、否応なく変革を迫る。どうしたら縮む市場を生き残れるか―。
独自の発想と“顧客目線”を貫くブレない経営哲学により、一代で売上1500億円超の企業を築き上げた通信販売のジャパネットたかた創業者で前社長の髙田明さんに縮む市場を生き抜く極意を学ぶ。聞き手は新建新聞社社長で新建ハウジング発行人の三浦祐成。
――人口が減る中、10年後に住宅の需要は半分ぐらいになってしまうのではないかと言われています。ますます住宅が売れにくくなる市場で、小さな工務店が元気に活躍するためにはどうしたらいいでしょうか。
あらゆるメディアを通じて何でも売れると思っています。大切なのは、どう伝えるか。工務店さんが持つ技術や良いものが消費者にきちんと伝わっていなくて、宣伝媒体を使いこなす大手に押されがちな現実は分かります。われわれも大きな量販店さんたちを相手に競ってきたので。そんな中で、オリジナリティーを磨きながら、伝えることに最も重きを置いて勝負してきたのがジャパネットです。工務店さんたちも培ってきた技術をはじめ素晴らしい個性(オリジナリティー)を持っています。ぜひ、伝え方について、じっくり考えてほしいですね。
お客様の喜びが戻ってくるから商売は楽しい
――伝えるうえで大切なことは。
伝え方で最も大切なのは情熱です。情熱を持って、やり続ける(訴え続ける)こと。お客様に良いものを届けたい一心で、30年近くラジオやテレビに立ち続けてきました。それが結果的に事業や会社の成長につながりました。
良いものをつくっても情熱がなければ伝わりません。その情熱は、お客様の立場になれば自然に生まれてくるはずです。売上や利益だけでは本当の満足感や喜びは得られません。買った人、使った人の喜びが戻ってくるからこそ商売は楽しいのです。これは、家づくりでも同じではないでしょうか。
「新結合」がオリジナリティーを生む
――これまで数多くのヒット商品を生み出してきた髙田さんに、商品開発について住宅業界に対するヒントをいただければ。
工務店さんたちの悩みどころは、オリジナリティーを出すことではないでしょうか。でも、そこはあまり深刻に悩まないでほしい。これまでのものを180度変える必要はありません。料理にコショウをふったり、オリーブオイルを加えるだけで格段においしさが増すように、ちょっとした変化が大きな効果を生むのです。
例えば、家族が暮らす住宅の柱に、「柱のキズはおととしの5月5日の背比べ~♪」の童謡にあるような、子どもの身長を記録しておく機能を設けたらどうでしょう。柱1本をウリに、家族の思い出と子どもの成長の足跡を残す家としてアピールすることができるのではないでしょうか。
私はシュンペーター(経済学者)の「新結合」という言葉が好きです。新しいものを生み出すのに、ゼロから開発する必要はありません。今あるものを効果的に結び付ければいいのです。
――企業のトップにとって髙田さんが経験から最も大切だと思うことを聞かせてください。
企業のトップに立つ人に一番大切なのは夢を語ることです。夢を語らなければ、若い人が仕事に生きがいを感じる職場環境をつくることはできません。忘れてはいけないのはミッション(理念)です。なぜ、住宅産業に携わっているのか。人間の幸せに直結する衣食住の一端を支えているという使命感を持ちながら夢を語り続けてほしいと願います。そのことが、きっと職場で働く若者を元気にし、さらに良い家づくりを目指す力の源になるはずです。
事業承継に必要なのは託す側の覚悟
――いま住宅業界でも世代交代が進んでいます。ただ一方で、過去の成功体験を捨て切れずに事業承継できないままの企業が多いことも事実です。きっぱりと経営から身を引いた髙田さんに、その思いをおうかがいしたい。
事業を引き継ぐときには、もちろん不安はありますが、それでも託す人に全てを任せる覚悟が必要です。不安はあっても、それ以上の期待があるじゃないですか。元気なうちに、ワクワクしながら次世代の経営を見つめることができるのはうれしいことです。
ただ、不易流行は大切です。時代や人にあわせて変えるべきものがあると同時に、絶対に変えてはいけないものもあります。それはミッションです。お客様にモノを買ってもらい、使ってもらって幸せを感じてもらうために企業が存続するということだけは変わりません。事業と一緒にミッションを受け継いでくれると確信できたからこそ、迷いはありませんでした。
それに、事業を引き継いだことで、自分自身が、また新たなチャレンジができる喜びを感じています。生涯、自己更新をしていく生き方を貫きたい。失敗も全て試練であり、プロセスですから、苦労だと感じたことはありません。全ては自己の成長に帰結するのです。
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