日本デザイン振興会(東京都港区)は9月29日、2016年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」受賞結果を発表した。「グッドデザイン・ベスト100」は審査対象4085件、受賞件数1229件の中から審査委員会により特に高い評価を得て選出された100件で、「グッドデザイン金賞」等特別賞の候補となるもの。住宅分野では、川辺直哉建築設計事務所(東京都千代田区)の「鎌倉材木座の住宅」などが選ばれた。
川辺直哉建築設計事務所の「鎌倉材木座の住宅」は、ふたつの住宅を敷地割りからデザインし、所有境界を越えて外部空間を共有することをデザインコンセプトとしたもの。鎌倉材木座の海岸から歩いて1分程の距離にある、海風を感じる穏やかな敷地で、同世代の2つの家族それぞれのために建てられた。
ひと家族で住宅を建てるには大きすぎる敷地だったが、接道巾が有効4m以上あったため、所有形態として完全に分離した敷地として敷地境界線から計画。敷地を分割する事によって損なわれるはずの本来の土地の広さを生かすために、2棟の配置をずらし建築面積を小さくする事で、生活と外部との親密な関係を創出した。木造在来工法による地上2階建てで、敷地面積はともに243.43m2。建築面積は36.76m2と39.05m2。
「所有という枠組みを超えて、生活を豊かにし、画一的な街並みを豊かにすることができないか」を念頭にデザインされた。「2つの家族が知り合いであるということは特殊条件であったが、敷地と建築の関係を再考するきっかけとなった」という。開口部の位置と大きさによって開放性とプライバシーを両立し、公園のような外構は近隣にとってのバッファーゾーンとしても機能することを意図した。
そのほか、戸建住宅では、松浦荘太建築設計事務所(東京都世田谷区)の「住居と園庭」(兵庫県尼崎市)が選ばれた。敷地の一部を隣地の保育園の園庭として使用し、1階が外部に開放されたピロティを設けたもの。隣地の保育園が住宅地の中にあるため園庭が非常に狭く、園児や保育士が近所の公園へ遊びに出かけるのを見たことから、施主と保育園を交えて話し合いを重ねて生まれた。審査委員からは「既存の住宅の立地を読み解くことで潜在する価値や社会的意義を引き出す試み」として評価を得た。
住宅関連では、「清掃性」の解決に向けて新しい衛生陶器の表面素材を使用したLIXIL(東京都千代田区)の便器「アクアセラミック」、原料に占める再生材料比率約60%を実現し、セメント特有の経年による自然な風合いの変化で安らぎを与えるケイミュー(大阪市中央区)の窯業系内装材「リサイクル内装ボード」、薄さ3mmで必要スペースだけを免震にでき、美観を損なわないアイディールブレーン(東京都千代田区)の室内免震装置「ミューソレーター」、パナソニック ホームエレベーター(大阪府門真市)によるリフォームで採用しやすい省施工・省スペースの「Panasonic ホームエレベーター 1608ジョイモダンS200V」などが選ばれた。
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