養生テープや気密・防水テープはふだん何を重視して選んでいるだろうか。使う機会は多いのに、じつは値段以外はあまり考えたことがない、というつくり手も多いかもしれない。
アクリル樹脂系の建築用粘着テープをつくり続けて50年以上。「カットエース」「エースクロス」といった人気商品を送り出してきた光洋化学(東京都渋谷区)の石川雅淑社長に、市場のうごき、粘着テープの選び方・使い方のコツを聞いた
工務店の気密・防水意識が向上
同社が気密・防水テープ「エースクロス」を発売したのは1996年。以降、新築着工戸数の影響を受けながらも毎年じわじわと出荷量を伸ばしている。
以前からハウスメーカー向けに養生テープや胴差の目張り用テープを商品化し実績をあげていた同社は、気密・防水テープ市場への参入も早かったという。「現場の声を聞いて毎年改良を加え、20年間ブランドを大事に育ててきた甲斐あって『アクリル系の気密・防水テープといえばエースクロス』というイメージが浸透したのだと思います。また、瑕疵担保責任の義務化以降は、保険法人が気密・防水テープの使用を積極的に呼びかけたこともあり、気密・防水処理に対する工務店さんの意識が上がったことも大きい」と石川社長は話す。
気密・防水テープにJIS化のうごき
課題もある。気密・防水テープの品質・性能を担保する公的な規準がないことだ。現時点では、日本窯業外装材協会(NYG)が実施する独自の推奨品制度が、その役目の一端を担う。これは、同協会が性能面について審査・確認した防水関連材料を「推奨品」として明示するもので、JIS規格対象外の材料であっても一定以上の性能の有無を判断することができる。だが、この推奨品制度の見直しが進められており、気密・防水テープについては4年後の廃止が決定。こうしたうごきを受けて業界は、気密・防水テープのJIS化を急ぐ。今秋にも申請し、5年以内の認証をめざすという。
安価な粗悪品に要注意
さらに、ここ2~3年で安価な商品が出回り始めたことも懸念材料になっている。「当社の粘着テープは十分な強度や耐用年数、使い勝手を追求し国内生産していますが、問題のテープは片面気密・防水タイプで通常の半値程度で売られています。工務店さんの立場からすると、施工資材は1円でも安いほうがうれしいでしょうが、性能と値段はある程度比例するため、安価なテープに十分な強度があるのか疑問です。粗悪品による瑕疵をつくらないためにもJIS化は必要で、つくり手の皆さんには多少コストはかかっても十分な性能と耐用年数を備えたものを吟味してほしい」と訴える。
ただ難しいのは、仮に粗悪な気密・防水テープが剥がれたとしても、それを発見するのは10年・15年後であるうえ、その原因がテープの性能不足によるものか、被着体との相性によるものか、施工不備によるものかを判断できない点だ。
手切れがよく高耐久な「エースクロス」の魅力
できる対策もある。たとえば、気密・防水テープを使う目的を明確化し、必要な性能・機能を備えたものしか使わないことを社内ルール化してはどうか。
一般的に気密・防水テープは、粘着体にブチル系ゴムとアクリル系樹脂を使ったものに大別できる。光洋化学の「エースクロス」は後者で、年間を通じて粘着力が強く、手切れ性がよく、手が汚れないため作業性にすぐれるのが特徴。また、透湿シートを膨潤(防水層に凹凸ができること)させないため、漏水の原因となる「水みち」の発生を防ぐ。耐久性は50年以上。用途や被着体に応じて15種類から選ぶことができる。
「施工のコツは、しっかり押さえつけて貼ること。サッシと透湿シートだけなら粘着力は20N/25mmか30N/25mmで十分ですが、木部や特殊な断熱材、撥水処理やアルミ蒸着したシートに使うなら45N/25mmあたりを選ぶとよい。前述したような安いだけのテープでは、これだけの粘着力はまず望めません」。
養生テープを選ぶコツ
一方、養生テープの市場も毎年広がりをみせているという。「養生テープの場合は貼り付ける相手がいろいろなので、1本で万能なテープはありえません。しかも、基本的に貼ってはがすものなので、被着体に応じて粘着力を選んでほしい」とアドバイスする。
同社の養生テープには2つの主力商品がある。基材にフラットヤーンと呼ぶ糸を使った「エースクロス」と、エンボスフィルムを使った「カットエース」だ。素材はまったく異なるものの、どちらも簡単に手で切れ、強・中・弱の3段階の強さから選ぶことができる。
使い方の注意点は、無垢材や自然塗料などのエコ系素材との相性。「粘着力が強いと自然素材の表面を損なってしまうので、弱めがおすすめ。リフォームも同様で、経年劣化で素地がボロボロの床面などは強粘着タイプは避けるべきです」。
繊細な被着体をしっかり養生するコツは「表面をキレイにすること」。そうすれば弱粘着タイプでもしっかりついて剥がれず、素地や塗面も傷つかない。
豊富なラインアップを持ち味に
新しい粘着テープの開発にも余念がない。最近は、防草シートの隙間から雑草が伸びるのを抑制する専用テープを商品化。このほかにも高コスパタイプの気密・防水テープ、塗装用マスキングテープ、コンクリート養生用テープ、換気ダクト用アルミテープなどの開発を企画中だ。「当社の持ち味は、高い性能と使いやすさ、豊富なラインアップです。いわば“副副資材”である粘着テープなんてどれもいっしょだと思うかもしれませんが、使ってみるとはっきり違います。ぜひ1度試してほしいと思っています」。
売れ筋は「カットエースFG(床養生)」
柔軟性のあるエンボスフィルムを基材につかった養生テープで、類似商品は意外とない。中粘着タイプで、塗膜をはがさず養生シートによくつき、剥がれにくい。手で簡単に切れ、糊残りしにくいため、使い勝手も◎。粘着力0.75N/25mm。幅50mmx長25m、30巻入。
ジャパンホームショー(10月26日水曜日~28日金曜日)に出展 ブース番号:2-A13
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