森亨介
エコキュート、エアコン、こたつ、ガスボイラー、灯油ボイラーと、住宅に熱を発生させる設備には様々なものがあり、その設備に投入するエネルギー源も様々です。どの設備のカタログを見ても、それらしいことが書いてあり、一体何が本当に良いのか、非常に分かりにくいです。
お客様からも、どんな設備を選べば良いのかわからないという相談をいただくことが多々あります。ECO is MONEY3回目は、そんな分かりにくい設備をどうやって分かりやすく比較し、お客様に説明するかについて考えてみたいと思います。
例えば、オーディオ製品などの家電製品を買おうと思った時、まず様々なメーカーのカタログなどを集めて、それぞれの特徴などを自分なりに勉強して購入しようと思われる方は多いと思います。そして、結局カタログだけでは何が違うのかわからず、ネットのレビューで違いを調べたり、お店に行って店員さんに聞いたという経験のある方も多いのではないでしょうか(私のいつものパターンです)。
住宅を建てるお客様も、どんな設備が良いのか自分では分からず、プロである建築業者にアドバイスをしてほしいと思っているはずです。給湯一つとっても、灯油、ガス、電気、バイオマスなど、数種類のエネルギー源と、それぞれに対応した設備があります。私は、同じような目的の設備が数種類あった場合、「同じ土俵で比べてあげる」ということをとても大切にしております。同じ土俵で比べてあげることで、どちらの設備が優れているのか、一目で比較することができるからです。
あるエコキュートのカタログを見てみると、年間給湯保温効率3.8、使用エネルギー量73.8GJ/年、年間光熱費約17万円と書いてあります。また、あるエコジョーズのカタログを見てみると、給湯年間ランニングコスト96,000円、CO2削減量257kg‐CO2、熱効率95%と書いてあります。
これを、「同じ土俵に乗せる」方法はいくつかあります。私が一番よくやるのは「発熱量当たり」に直して比べることです。1kWhの熱量を発生させるのに、いくらかかるのか(円/kWh)、またはどのくらいCO2が発生するのか (g‐CO2/kWh)という土俵を作って、様々な設備をそこに乗せてあげることで各設備の実力を比較することができます。
単位をJ(ジェール)ではなくkWh(キロワットアワー)に統一しているのは、エアコンの能力や、電気代への単位変換が容易という理由からです。
本当はCO2排出量に目を向けて、薪ボイラーの導入を検討していただいたり、太陽熱温水器の導入や、太陽光発電で作った電気を売らずに温水器の電源とするようなことを考えていただけるのが理想なのですが、現実的にお客様の興味を引きやすいのはやはりお金です。杉の木〇〇本分のCO2低減よりも、月に5,000円浮くと言った方が分かりやすいです。
では、どうやって同じ土俵に乗せるのか、今回は都市ガスを使ったエコジョーズ、深夜電力を使ったエコキュートと電気温水器を例題に取り上げてみます。
都市ガスは1m3燃焼させると12.5kWhの熱量を発生させる燃料(12.5kWh/m3)です。また、1m3あたり140円のコストがかかる燃料(140円/m3)でもあります。
コストを熱量で割ると140円/m3÷12.5kWh/m3=11.20円/kWhとなり、それを熱効率95%の設備で燃焼させたとすると、11.20円/kWh÷0.95=11.79円/kWhという数字が出てきます。
都市ガスでエコジョーズを使った場合の燃料単価は11.79円/kWhとなり、年間に6850kWhの熱量(毎日40℃の湯を200L使える程度)を得たとすると約80,800円となる計算です。ちなみに237Lずつ使うとカタログ上の96,000円になる計算ですね。
電気の場合は1kWhの電力で生み出される熱量は1kWhです。また、深夜電力料金は13.5円/kWhです。重要になってくるのがエコキュートの年間効率ですが、少し割り引いて3.0で計算してみますと、13.5円/kWh÷3.0=4.5円/kWhとなり、同じく6850kWhの熱を給湯に使った場合、年間給湯コストは約30,800円となります。毎日規則正しくお湯を使うのであれば、エコキュートとエコジョーズの価格差はこのくらいになるはずと、お客様に説明できるようになります。
また、電気温水器とエコキュートの違いは、年間効率そのものの違いになりますので、単価も3倍の13.5円/kWh、年間コストも3倍の約92,400円となります。
エコキュートや電気温水器について言えば、貯湯量の余裕分や、昼時間帯の追加湯沸かしなどの要因により、金額が上がって行きますので、提案時にはその余裕を見込むか、できるだけ給湯量が一定になる規則正しい生活をしていただく必要があることを説明しておいた方が良いと思います。
今回作成して掲載させていただいたグラフや、コラムの計算例はすべて岐阜県岐阜市で、2016年現在の単価を基にしておりますが、燃料の単価は全国一律ではありません。寒冷地ではヒートポンプの能力低下と灯油価格の低下が相まって、灯油による給湯の方が割安になる場合もあります。
是非、お客様のためにも皆様がご活躍されるそれぞれの地域において、ベストな提案ができるようになっていただきたいと思います。
森 亨介 kosuke mori 凰(おおとり)建設 専務 岐阜県内を中心に断熱性能にこだわった住宅を建設する凰建設で、技術・営業面を担う。理想の暮らしから性能数値を逆算する新しい住宅シミュレーションソフト「ebfit!」を独力で開発。名刺代わりに良い家を作る仲間集めに奔走中。
凰建設HP http://www.ohtori.net/
ebfit! HP http://ebfit.jimdo.com/
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