「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」は、9月中に国土交通省に提出を予定している第3回最終報告書案で、2016年熊本地震で観測史上初となる2回の震度7を受け大きな被害を被った益城町中心部を対象に、域内全棟の建物被害調査結果を発表した。
前回6月末に発表した第2回報告書と比べ、今回は調査対象となる2340棟全棟の建築年と被害状況を特定した。
これによると、1981年5月以前に建てられた木造建築770棟のうち、729棟が何らかの損傷を被り、その確率は94.7%。倒壊・崩壊も215棟と27.9%にのぼった。
これに対し、現行規定の2000年6月以降に建てられた木造建築323棟のうち、何らかの損傷を被ったのは125棟(38.7%)。倒壊・崩壊は7棟(2.2%)となった。倒壊した7棟のうち3棟は規定通りの接合部仕様を満たしておらず、1棟は地盤変状であることがわかった。残り3棟は明確な被害要因が確認できなかったが、「震源や地盤の特性に起因して局所的に大きな地震動が作用した可能性が考えられる」とした。
さらに対象地域には住宅性能表示制度を利用している住宅が19棟あり、このうち16棟が耐震等級3を取得していた。等級3を取得した住宅16棟のうち、14棟が無被害、2棟が軽微か小破の被害にとどまった。
今回の熊本地震被害を受けて、報告書では木造建築の今後の対策として、「旧耐震基準(1981年5月以前)に建てられた木造建築物の耐震化促進」「現行の平成12年基準(2000年6月以降)に適合しない建物への被害抑制」「(耐震等級3を取得を促す)住宅性能表示制度の活用」などを提言する予定。
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