「無印良品の家」をネットワーク展開するMUJI HOUSE(東京都豊島区)は、主力の「木の家」に代表される商品力、ウェブを中心としたマーケティング力、効率的な営業システムで高収益を実現している。同社の田鎖郁男専務取締役に、増税後の住宅市場とそこを生き抜くヒントを聞いた。(聞き手:本紙発行人三浦祐成)
高収益を実現する商品としくみが生き残る基本
「定番住宅の普及で真の資産価値を実現したい」
――増税後、新築市場は縮小期に入る。縮小期の常として寡占化が進む。新築を受注できなくなる工務店が増えていくのではと心配している。
消費増税後重要になるのは棟数よりも収益性だ。企業が生き残るには利益を出し続けるしかない。高収益を実現するには、付加価値を高めること、経営効率・生産性を高めることが不可欠だ。
――住宅においてどう付加価値を高めるか。また高収益にはブランド力も不可欠だ。
「無印良品の家」が考える高収益商品とは、明確な商品コンセプトとそれを体現するデザイン、そして高い性能をもつ住宅だ。だが、それだけでは売れない。無印良品の衣装ケースが、ホームセンターの衣装ケースよりも何倍も高くても売れるのは、無印良品というブランドがあるからだ。確かに、この高いブランド力を住宅でも活用できるのが当社と加盟店の強みになっており、高収益の要因になっている。
――生産性を高めるには標準化/商品化を進める必要がある。ここを上手に行い、しかもロングセラー=定番商品・定番住宅化しているのが「無印良品の家」の特徴でないか。
「無印良品の家」はひとつの商品を多くの人に長く買っていただく仕組みを構築できた点が大きい。目指したのは、形を変えずに、顧客に合わせずに広がっていくこと=売れること。「無印良品の家」のなかで一番売れているのは事業が始まった10年以上前から提供している「木の家」で、全体の85%を占める。まさに定番商品・定番住宅だ。
――良質な定番住宅が増えていけばストック市場の活性化も期待できる。定番住宅のほうがメンテナンスも楽で、個人にジャストフィットしすぎる注文住宅より、売ったり貸したりしやすい。
主力の「木の家」は、2015年度グッドデザイン賞でロングライフデザイン賞を受賞。日本の定番住宅という評価を獲得した。ネットワークの販売棟数の85%を占める
もともと「無印良品の家」事業は資産価値を維持できる住宅を目指してスタートした側面がある。「木の家」を、新築で建てるか中古で買うか選んでいただけるようにしたかったし、その環境づくりも目指してきた。これができて初めて本当の意味で資産価値がある住宅になる。もちろん、同じ商品をずっと提供していくことでメンテナンスも容易になる。
ただ、時代の要請に合わせて性能は大幅に見直した。デザインは変えず、アルミ樹脂複合サッシ+トリプルガラスで、外皮平均熱貫流率UA値0.41を標準仕様にした。加盟店のモデルハウスも改修で性能アップしていく予定だ。時間が経っても古くならない。それを具現化したのが「無印良品の家」事業だ。
――経営効率を高めるには集客・営業コストを下げる必要がある。
「無印良品の家」は展示場来場者の動向をリアルタイムで把握できるウェブマーケティングシステムを導入。そのデータも生かしながら営業の仕組みをパッケージ化している。経営の高効率化=材料を安く仕入れることではない。生産から売るまでのオペレーションコストをどれだけ抑えるかで、集客・営業コストの削減はその核となる。
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コンセプトから商品、そしてプロモーション/セールスまでを一貫性をもって標準化・しくみ化、さらに「無印良品」のブランド力を活用することで、差異化と高収益を実現していることを理解できた。ありがとうございました。
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