「デイ・アフター・トゥモロー」という映画がヒットしている。地球温暖化が原因で全世界が凍結−氷河期に突入していくというパニック映画だが、ここまで劇的ではなくても温暖化が及ぼす気候・気象への悪影響が次々と明らかになっている。実際、イギリスがここ何十年かのうちに寒冷期に入っていくとするレポートもあるくらいだ。
温暖化の原因となるのは二酸化炭素をはじめとする「温室効果ガス」。このため、この温室効果ガスの排出量を減らすことが世界的な課題とされ、1997年の「地球温暖化防止京都会議」でその具体的な目標レベルを各国が約束する「京都議定書」が提案された。目標レベルは国によってさまざまだが、日本は2008年から12年の間に温室効果ガスの排出量を1990年レベルから6%削減することを約束している。
この約束の実現に向け、政府は基本方針となる「地球温暖化対策推進大綱」を98年に策定。これに沿って各省庁が温室効果ガスの削減=省エネ対策を進めてきた。
■進まない省エネ
ところが工場など産業部門では省エネは進んだものの、全体でみると2002年度で1990年レベルより7.6%も温室効果ガスの排出量が増えた。つまり、京都議定書の約束を守るためには、12年までに02年レベルから13.6%温室効果ガスを削減する必要があるということになる。
この厳しい現状をうけ、また今年が地球温暖化対策推進大綱の見直しの年にあたることもあり、各省庁が本腰を入れ、新たな省エネ対策を検討している。
■次世代基準を5割
6月末を目指してとりまとめが進んでいる省エネ施策をみると、対策の柱に挙げられているのは民生部門−住宅を含む家庭における省エネ対策とオフィスや商業施設など業務関連の省エネ対策だ。
【下表】に国土交通省と経済産業省による住宅関連施策をまとめたが、当面の重点施策は次世代省エネ住宅の普及だ。2008年度までに次世代省エネ住宅の比率を5割に高める、という目標を両省で推し進める。現行の地球温暖化対策推進大綱では、住宅については原油換算で300万キロリットルの省エネを目標としているが、次世代省エネ住宅が5割になるだけで約280万キロリットルの省エネが可能だからだ。
国交省では、住宅性能表示制度を利用した住宅のうち21.5%が次世代省エネレベルの等級4を取得しており(02年度)、その率が上昇傾向にあることから、今後政策でフォローアップすれば08年で5割の達成は可能とみている。ただし、状況次第では「次世代基準の義務化も選択肢としてはある」(国交省)とする。
■リフォームも重点
施策のもつひとつの柱が、既存住宅の省エネ化−省エネリフォームの推進だ。国交省や経産省では、省エネリフォームに対する補助・助成を充実する。すでに経産省では、今年度からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて既存住宅の省エネリフォームへの助成をスタートしており、来年度以降は両省で推し進める。
【表】
国土交通省の主な温暖化対策
●省エネリフォームの市場整備・支援
[17年度] 助成・補助・税制・融資面の支援も検討
●省エネ性能の評価・表示の普及・促進
[16年度] 新規施策はなし。従来からのPR活動を継続
●「CASBEE」の開発普及
[16年度] 既存建築物のCASBEE(環境性能評価システム)を公表
●地域マテリアル循環マネジメントシステムの研究開発
●リーディングプロジェクトの推進
[17年度] トップランナーによる技術開発プロジェクトを支援
●環境に配慮した住宅部品の普及促進
[16年度] ベターリビングで省エネ住宅部品を認定
●住宅用燃料電池の技術開発・モデル導入
[16・17年度] 実証実験 [17年度] モデル導入を実施
●省資源・省エネの新システムの開発
[16年度] 国土技術開発総合研究所で設計支援ツールや事業手法を開発
●建築性能評価・対策技術の開発
[16〜18年度] LCCO2や廃棄物排出を含めた環境性能評価手法を開発
ガイドラインの策定
●建設発生木材のリサイクル促進
[16年度] 行動計画策定。リサイクル木質建材の開発など
経済産業省の主な温暖化対策
●住宅の省エネ性能の向上
[16年度] 次世代省ね住宅の普及、省エネリフォームの推進
●高効率機器の加速的普及
[16年度] 高効率ヒートポンプ給湯器・潜熱回収型給湯器への補助・助成など
●HEMSの普及
[16年度] HEMS(家庭用エネルギーマネジメントシステム)の普及促進ロードマップ作成
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