住宅不動産取引支援機構(東京都港区)は11月11日、会員向けの新サービスとして「住宅あんしんインスペクションサービス」の提供を開始し、都内で「新サービス開始記念セミナー」を開催した。セミナーでは新サービスの案内や、同機構の今後の取り組み説明を行ったほか、早稲田大学教授の川口有一郎氏、日本大学教授の中川雅之氏が登壇して、日本の住宅不動産市場とその展望について講演した。
同日発表された「住宅あんしんインスペクションサービス」は、同機構の会員に対して建物検査、設備検査、白蟻検査の3つをワンストップで提供するもので、ジャパンホームシールド(東京都墨田区)、日本リビング保証(東京都渋谷区)、日本長期住宅メンテナンス(大阪府高槻市)の3事業者が提携して検査を行う。検査後の検査結果報告書は、契約前の売主の告知書作成の参考資料に活用できるほか、添付の保証書発行依頼書によって保険・保証の申し込みができるなどメリットがある。
記念セミナーで冒頭の挨拶に立った代表理事の赤井厚雄氏は、設立2年目を迎える同機構の取り組みとして「全国の住宅不動産に関わる方々と手を取り合いながら、どうやってシステムを変えて、市場を活性化し、住宅の価値を上げていくのかが重要な課題」とした上で、今回のサービス導入について「将来においてスタンダードになる、『将来の当たり前』という情報開示の水準として提示していく」との位置づけを示した。
基調講演を行った川口氏は、同機構の動きを踏まえた今後20年の日本の住宅不動産市場の展望について「建設したあとの診断からアフターサビスまでが、バリューを構成するために非常に重要なところ。お金と住宅の循環ができれば、20年で建物の価値がゼロという認識も薄れてくるのではないか」との考えを述べた。
特別講演を行った中川氏は、現在の住宅不動産市場が抱える売主と買主の情報の非対称性の解消に向けて「市場分割をやめて、すべての売り手とすべての買い手が向き合うような公平な情報の仕組みが大切」「マッチングの際に利用できる情報の種類と量を増やすこと」と課題をあげ、同機構の新サービスについて「売り手と買い手が向き合って、効率的なマッチングを成立させ、市場が拡大するような世界を実現する一つのチャンス。業界のためということでなく、日本全体の生産性に資する取り組みとして期待している」と述べた。
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