静岡県を中心に富士山を取り巻く近隣建築事業者約260社が加盟する一般社団法人・富士山木造住宅協会(事務局:静岡県富士市、大瀧功代表理事)は、6月19日に開催した定期総会の中で、工務店が施主と交わす請負契約について、首都圏の若手工務店経営者3名を招いて実践例を共有するパネルディスカッションを開催した。
登壇したのは、いずれも先代から事業継承した次世代経営者・青木哲也社長(青木建設・神奈川県大和市)、小林弘淟社長(水戸工務店・千葉県柏市)、竹脇拓也社長(タケワキ住宅建設・千葉県松戸市)の3者。約1時間に及んだディスカッションでは、新築やリフォーム工事における請負契約(設計契約)を交わすタイミング、契約書式の種類、特記事項・添付資料・覚書の有無、内容読み合わせの方法など、社内で既存のやり方が慣習化され普段社外も話題にのぼりにくい請負契約の現状を3社で公開した。
新築の請負契約
このうち、新築時の工事請負契約書式については、タケワキ住宅建設と青木工務店は「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」を使用していた。水戸工務店も同書式をもとにしながら「施主と施工者の対等な関係になる」「文言が難しく誤解されやすい」など詳細を独自に調整した書式を使う。それでも「民間連合書式」を希望する施主には即対応できる状態とした。
また約款の内容説明について。青木工務店では「全文読み合わせは2時間かかる」として細かい読み合わせをしない代わりに、「事前にメールで約款を送り、契約当日は施主から分かりにくい部分を補足説明したり、とくに強調すべきところを説明している」とした。
タケワキ住宅建設では、基本的には契約直前までには相互の信頼関係を前提が築かれている上、過去には「長々説明されてもよく分からない」という反応もあったため、現在は約款内容の説明はおこなっていないとした。「これまでトラブルがないから説明もしていない」と現状を説明した。
水戸工務店では、契約内容の読み合わせを重視。独自書式を使う理由も「読み合わせの所要時間が30分程度でおさめるため」とした。民間連合書式とほぼ同じだが、内容を一つ一つ確認し、わかりにくい言い回しはその場で補足説明する。「信頼関係を築くためにも必要なひとつのやり方」とした。
また民間連合書式では、地震や洪水など天災によって建物が損傷した場合には原則施主側が負担する」と明記されている。こうした施主の不利益につながることをどのように扱うかついて、水戸工務店では、読み合わせの際に「毎回言いにくいと思いながらも説明している」とした。
またタケワキ住宅建設は、約款が「お互いに不利益のないように決められている前提をしっかり伝えることが大事」としたうえで、「施主から指摘がある場合には、専用の保険も案内するようにしている」とした。
リフォームの請負契約
リフォーム工事で契約請負について。リフォーム工事はOB施主向けが多いという青木工務店では、現在50万円以上のリフォーム工事に請負契約書を導入。書式は住宅リフォーム・紛争処理支援センター推奨の「標準契約書式」(住宅リフォーム推進協議会発刊)を使用している。
同社内では当初「長い付き合いなのになぜ契約書を交わすのか」と嫌がられるのではと考えていたが、実際はリフォーム工事でもOB施主の反応は良好で「嫌がられることはほとんどなかった」という。
水戸工務店では、以前は1000万円規模でも契約書を交わさなかったが、現在は100万円以上の請負工事にはすべて契約書を交わすことにした。同社でも導入から現在までで「契約書は必要ないと断る施主はまだ一人もいない」という。
タケワキ住宅建設も、現在ではリフォームを含め30万円以上の工事では請負契約を結んでいるとした。
ディスカッションを進行した同協会遠藤龍一事務局は「大きな民法改正を控えており、請負契約の書式を見直す時期にきている」として、登壇者に積極的に質問を投げかけた。同協会では今後もさまざまなかたちで会員工務店に請負契約の見直しを呼びかけていくという。
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