静岡市で行われた第11回工務店ミーティング
新建ハウジング主催「地域工務店ミーティング in 静岡」
新建ハウジングは4月10日、静岡市内で「地域工務店ミーティングin静岡」を開催した。今回で11回目。静岡県内から県担当者のほか工務店経営者ら15社16人が参加し、理想とする暮らし、空間のあり方やブランディングへの取り組みなどで意見を交わした。ミーティングの内容を抜粋して紹介する。(文中敬称略)
工務店ミーティング参加者
- 駿河工房[静岡市]代表取締役 今井延夫さん
- 遠州鉄道【遠鉄ホーム】[浜松市]住宅事業部住宅企画課副課長 田中正克さん
- 浅田建設【カナデホーム】[沼津市]代表取締役 浅田佳宏さん
- 扇建築工房[浜松市]代表取締役 鈴木昌司さん
- 佐野製材所[静岡市]代表取締役 佐野賢輔さん
- 石牧建築[浜松市]代表取締役 石牧真志さん
- 納得住宅工房[富士市]取締役副社長 倉本 大さん
- ワイズホーム[焼津市]代表取締役 岩本幸男さん
- 大場建設[三島市]住宅事業部監理リーダー 杉山 徹さん
- ナイス[沼津市]沼津市場市場長 甲斐隆治さん
- 鈴三材木店[浜松市]代表取締役 鈴木 諭さん
- 鈴三材木店[浜松市]第二営業部部長 加藤朗夫さん
- 望月工務店[藤枝市]代表 望月隆睦さん
- ダイバホーム[静岡市]企画開発次長 蒔田義成さん
- しずおかオンライン[静岡市]住まい情報事業部 住まい事業推進課課長 遠藤一訓さん
- アイジーコンサルティング メンテナンス事業部沼津店 法人課リーダー 山中のぞみさん
- 静岡県庁 くらし・環境部建築住宅局 住まいづくり課主査 続一暁さん
- 静岡県庁 くらし・環境部建築住宅局 住まいづくり課副班長 杉山広孝さん
庭木の充実が収益力アップに
今井延夫氏[駿河工房]:私は駿河地方の風土に合ったまちづくりをしたいと考え、家を建ててくれた人には必ず木を1本植えてもらってきた。これを継続することが、まちづくりにつながる。環境に目を向け、地域の文化を育んでいくのが工務店の役目だ。
田中正克氏[遠州鉄道(遠鉄ホーム)]:住宅会社は家づくりに特化したものと考えがちだが、15年前から畑を併設した宅地分譲を行ってきた。分譲価格は周辺より高くなってしまうが、ブランド価値が高まり、活動的な住まい手には好評をいただいている。これを持続させるためには、組合による管理が重要になる。
浅田佳宏氏[浅田建設(カナデホーム)]:規模に関係なく、よりよい環境づくりにグループ化して取り組むことが重要。(県の「豊かな暮らし空間創生住宅地」認定要件の)6区画より少なくてもよいと思う。感度の高いお客さんは関心を寄せるはず。
鈴木昌司氏[扇建築工房]:社員に造園への関心を持たせるため、すべての造園業務を社内で行うことに。また請負契約時の見積もりにあらかじめ造園工事の予算を150万円を目安に計上させていただくようお施主様にお願いしている。これは、きれいごとではなく「1件当たりの請負契約単価を上げる」ため。付加価値をつけて販売していくことで利益が出しやすくなる。造園の大切さは、施主参加のワークショップなどでアピールを継続している。それまでは庭と一体となった家づくり関心がなくても、多くの参加者にファンになってもらえる。これが施主教育にもつながる。
佐野賢輔氏[佐野製材所]:お客様にはハコとしての住宅性能を高める一方で、庭木の役割をアピールしている。樹木を植えることで四季を体感でき愛着がわいてくる。国は省エネ基準の徹底を国策として進めているが、省エネ性能を高めるには本体の断熱性能だけでなく遮熱や風、日射など周囲の環境が大きく影響することを知っていただきたい。
地域交流を工務店がリード
石牧真志氏[石牧建築]:人の暮らしは家だけにとどまらず、地域との関わりの側面も大きい。暮らしにこだわりを持っている店舗との交流を工務店が積極的にリードしていくことで、地域の文化に貢献できる。4月末に地元の家具店を借りて、いろいろな専門店が集まるイベントを進めており、こうして人に関わることを常に考えていきたい。
倉本大氏[納得住宅工房]:全国の工務店をまわって集客の話をすると、チラシの効果が激減しているとわかる。もちろんホームページなどの試みも重要だが、今までの集客方法だけでは限界に来ていると感じる。当社では潜在客を増やすために衣食住の「住」のほかにレストランやアパレル事業まで始めた。これからの工務店はそれぞれが特殊性を発揮しなくてはいけないと思う。ハウスメーカーはいかに売れる家をつくるかばかりを考えているので、工務店は家づくりに夢と興味を感じるお客様としっかり向き合うことが大切だ。
ブランド化は継続と禁止項目で
岩本幸男氏[ワイズホーム]:自社の特色を出すといったとき、結局、県産材にしても補助金があるから使う、といったかたちになってしまう。積極的に使っているが、いま一つ、本当の意味がお客さんに伝わらない。ブランディングに成功しているといわれる会社を見ていると、一つのことをずっとやり通す意志を感じる。そういうものを自社でどう見極め、どう取り組んでいけばいいのか、大きな悩みだ。
杉山徹氏[大場建設]:我々も、昨年に比べると見学会の集客数が減ってきた。同時に、お客様との折衝案件になる数も減ってきている。通常のやり方では、見学会の効果が落ちているのは確か。インターネットの活用をはじめ、ほかの方法を模索している。
遠藤一訓氏[しずおかオンライン]:まち並みの中に「この工務店の仕事だな」と容易に判断できる同じテイストの家を増やすことが、ブランディングにつながるのではないだろうか。
甲斐隆治氏[ナイス]:一つのスタイルをやめずに継続することが、ブランディングにおいて重要だと思う。
鈴木昌司:ブランディングで大切なのは「何をやらないか」を決めること。ビニールクロスや窯業系サイディングの禁止など、毎年のように禁止項目を増やすことでブランディングにつながると考えている。何でも売っている小売店より、専門店のほうが安心感を与えられる。このほか、雑誌などのマスメディアに頼らない。わざわざ競合先をつくる必要はない。
鈴木諭氏[鈴三材木店]:遠州地域の衣食住の事業者や店舗が連携して行う展示即売会「遠州バザール」を手がけてきた。効果はさまざまあるが、そのうち意外だったのがリクルート(求人)への効果だ。対外的なアピールで知名度が上がり、またそれが社員の質を上げていくことにもつながっている。
浅田:ブランド化は継続して進めている。値引きなく売れるようにしたい。ブランド化が人材育成に役立っている側面も確かにある。
田中:当社は逆に、どちらかというと万人受けする、とんがっていない商品をそろえている。少し遡るが、産業革命以降、同じものを大量生産で安く提供して潤った時代があった。住宅でいえば、パワービルダーが押し寄せて安い住宅を提供してきた時代があり、今、それが少し落ち着いたところだ。ゆえに特色のある会社が「うちはこうですよ」と訴えていくにはもってこいのタイミングで、だからブランディングという言葉にスポットが当たっているのではないか。時計も一時はデジタルのメーカーが市場を席巻したが、いま再び機械式が巻き返している。時代は繰り返す。当社もブランディングはまだ欠けているので、この機に追求していきたい。
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