コストと品質のバランスの取り方
編集部:宮田さんからGoogleマップで25分以内に仕事を絞っているという話があったが、地域を密にしても仕事は途絶えないか?
宮田[アニバーサリーホーム]:そこはしっかり見ていかないとと思っている。ただ、自分たちは工法にこだわっていなくて、誰のための家か、誰が住むのか、どう暮らすのかを常に考えている。工法にこだわりたくても、予算が少ないお客様もいる。そうしたことを重視して、時代の変化に対応していけば仕事が減るとは考えていない。
編集部:変化という点で、予算という話が出た。コストとバランスして、お客の夢を叶える家を提案することが大切だと感じる。
丹羽[丹羽明人アトリエ]:お客様のコストは年々下がっているという印象がある。こちらの考えを押し付ける気はないが、自分たちが薦める家の質を、コストのためにそぎ落とすことはできない。なので、コストを下げるには規模を小さくまとめるプランニングが重要だ。30坪でのびのび暮らせる家もある。機能を落とさず、質を落とさず、延べ面積を落とせばコストと夢を叶える家をバランスできる。
竹内[iiie]:利益をいかにお客様に還元するか。うちでは利益率を25%だとお客さんや職人さんに公開している。その利益率より利益が出たら、その分はお客様に返す。
価値観の変化感じる住宅以外にも対応
川合英二郎氏[チリウヒーター]:当社は太陽熱温水器のメーカーで、去年は太陽熱温水器はとても苦戦したが、今年は少し変わっている。というのも、少し値段が上がってもピカっと格好良ければ若い世代が「何これ? ヤバい」と言って興味を持ってくれるようになった。昔は「なんぼ」しかなかった。そういう面もある。
小山雅弘氏[シンホリ]:興味が変わっていると感じる。当社では工務店さんとマンションのリノベーションをやるなど、新しいことにチャレンジしている。例えばK’z HOMEの加藤さんはグリーン系の雑貨店を併設されているが、そういった新しい価値観に対応されている状況などを聞いてみたい。
加藤[K’z HOME]:(雑貨店が受注の)役に立つかな、と思ったけれど、なかなか難しかった。
編集部:川口さんはリフォーム店の隣にレストランをオープンされている。
川口[豊和住建]:リフォーム店だけではお客様がこないので、レストランをやろうと始めた。コンセプトは「女性に好かれる」で、女性スタッフがプランニングした。豊和住建を知らない人がレストランに来て、横をみたらリフォーム店がある。会社の名前を覚えてもらわなくても、そこにリフォーム店があるんだということを知ってもらえばいい。そこから仕事につながるのは5年先、10年先。ともかく、人が集まらないところに仕事は来ない。
編集部:河合さんは町づくりの活動をし、人が集まる場所をつくっている。そうした場所を工務店がやることの意義や可能性は?
河合[カワイ建築]:これからの工務店がやるべきことの一つだと思っている。工務店ならちゃんとお客さんと顔を合わせてつながり、お金のマネジメントができる。もちろんすべてをやることはできないので、アイデアはコンサルタントが出し、顔役のような人が地元を仕切る——というように、それぞれの役回りに長けた人と組むことが重要だ。工務店が担う地域活性化には可能性がある。
川口[豊和住建]:ただ、今回のレストランは副業という意味が大きい。そこでどれだけ稼げるか。赤字ではいけない。
加藤[K’z HOME]:阿部さんから、愛知の新築市場が今の6割に減るという話があった。人口減は間違いない。そこで生き残っていくためにはどうすればいいのか。それがリフォームなのか、新しい価値観に対応することなのか、それとも副業なのか。そういったことを考えている。
萱森[創住環]:新築市場が先細りというのは確実だ。会社が存続しないと我々も困るが、なによりお客様が困ってしまう。だから工務店は存続しないといけない。そのために新しい市場に出て行くというのは一つの考え。当社では免震や地盤改良などの技術を使い、住宅ではなく店舗や工場の耐震やBCP(ビジネス・コンテュニティ・プラン=事業継続)の分野に活路を見出そうとしている。本業からちょっとだけ離れた場所に出てもいいのではないか。
竹内[iiie]:我々は建築の仕事が、家づくりが仕事が好きだから残っている。好きな人たちの集まりだったら、こうやって意見やアイデアを出し合えば乗り越えられると思う。そのためにはまず、社内が楽しくないといけない。
『新建ハウジング・プラスワン2015年6月号』(2015年5月30日発刊)から。
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