建設業の事業損失サポートを専門とする中央建鉄・中央技術研究所(東京都新宿区)は、東日本大震災により広範囲で液状化による建物の不同沈下があったことについて、国の基準にもとづいて各自治体が行っている罹災証明の判定に「過小評価の恐れがある」として、運用上で是正する提言をホームページに公表した。すでに認定を受けた住宅でも、被災者の不服申し立てにより再検査が実施される可能性もある。
内閣府が定めた「災害にかかる住家の被害認定基準運用方針」に基づき、地方自治体職員によって実施される「罹災証明」は、被災者生活再建支援金の支給額算定の根拠となる。
認定基準のうち「傾斜による判定」を適用すれば、建物の安全性の観点から、外壁や柱の傾斜角が1/20(基礎長10メートルに対して沈下50センチ)以上で「全壊」、傾斜角が1/60(基礎長10メートルに対して沈下約17センチ)以上の場合は、住家の損壊が20%以上で「半壊」、傾斜角1/60以下は認定の対象とならない。
だが近年は基礎の剛性が高くなっているため、建物全体が一体的に沈下し、建物被害が生じない事例が多く、建物傾斜が1/20(基礎長10メートルに対して沈下50センチ)以上でなければ被害認定の対象にならないと判定される恐れがあるという。
一方、同じ内閣府認定基準のうち基礎部の「部位別判定」を適用し、基礎全長のうち損傷基礎長さが75%以上となれば「全壊」と判定できる。このため同研究所は「評価が適正にされればこの問題は解決される」としている。
日本建築学会が2008年に発行した「小規模建築物基礎設計指針」では、基礎長さ10メートルに対して沈下8センチで「ほとんどの建物で建具が自然に動く」、沈下10センチで「排水管の逆勾配」、沈下17センチを「居住者の生理的限界」としている。
同研究所では、基礎長さ10メートルに対して沈下が8~10センチ以上ある住宅は住居者に生理的な影響が生じ、修復には多額の費用が必要であることから、「建物の安全性だけでなく、居住性の観点をふまえて認定を運用されることを望む」と全国の行政担当者に提言している。
すでに認定がされた場合でも、被災者からの不服申し立てがあれば再調査が実施される可能性がある。行政担当者からの問い合わせにも応じる。
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