職人の高齢化、若年者の入職減少・離職など構造的な人材不足問題が深刻化する建設業。こうした業界の構造的な課題の解決に向け、「クラウドソーシング」というウェブサービスが浸透し始めている。建設業界に特化したクラウドソーシング「ツクリンク」は、ITにアナログをミックスして、建設業界のネットワーク構築をサポートする。2015年2月17日現在、登録会員数がサービス開始から約1年9カ月で1000社を突破した。
「クラウドソーシング」とは、不特定多数の外注先に仕事を依頼すること。社内のリソースでは足りない分を、ネットワークを使って効率的に補充する仕組みだ。ネットでの納品がしやすく、仕事の分業化が進んでいるクリエイティブな分野の仕事では、急速に一般化している。
一方で、建設業の現場では、電話、ファックス、口頭伝達など他業種に比べてアナログなやり取りがまだ多く、IT化取り組みが遅れており、生産性を上げたくても上げられないという事情がある。
ツクリンクを運営するハンズシェアの共同代表のひとり、内山達雄さんは、もとは建設業界で仕事をしており、とび職の会社を立ち上げた経験を持つ。
「仕事量は変動するため、常時、職人を抱えることは難しい。かといって仕事が入った時に、すぐに必要な職人を手配することも難しい」(内山さん)。そうした課題を解決しようと、気軽に仕事を発注し合うネットワークの構築を目指している。
ウェブを使った建設業の仕事の受発注の仕組みはこれまでにもあった。ツクリンクのサービスの大きな特徴は、法人・個人を問わず、仕事の受発注という基本的な機能は原則無料で利用できる点だ。ITサービスに対するハードルを、まず費用面で下げることで、一度でも利用してもらうことを優先したという。
登録は30秒。必要な情報は、個人名もしくは会社名、電話連絡先、メールアドレスのみ。会員登録をすると仕事の発注や自社の「空き状況」の登録が可能になる。
会員との登録のやり取りはデジタルだけではなく、人的な介在を重視している。
「ネット経由でのサービス提供ではあるが、登録時には確認の電話をかけるなど、アナログ的にも支援する」(共同代表ひとり、齋藤実さん)。人と人の結びつきをサポートするのがツクリンクのサービスの根幹だという。ウェブは窓口のひとつでしかないという考え方だ。
典型的な例が、クラウドソーシング大手のクラウドワークス(東京都渋谷区)との連携だ。ツクリンクが窓口になり、ツクリンク会員企業からの発注をクラウドワークスにつなげる。具体的には、ロゴやチラシ、名刺のデザインの発注を代行するというもの。「どのように依頼すればいいのか、こちらでサポートして円滑な発注をサポートするサービス」だ。ハンズシェアは、その基本的な流れでは手数料を取らないという。
同社は今、ほかの外部のサービス提供会社とも積極的に提携を進めている。確定申告のサポートなど、建設業界に必要なサービスをわかりやすくパッケージ化して提供する。そうした付加的な価値を有償で提供していくことで収益化を図っていく考えだ。
ただし、当面の目標は目先の売上よりも会員数1万社をできるだけ早く達成すること。集まってくる数を増やすことで、仕事の受発注が気軽に、確実にできるようにする。建設業界の標準的なマッチングプラットフォームとして認知してもらうために、建設業者の目線に立った使いやすさとサービスを追求していく。
新建ハウジング2015年2月28日号から
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