安齋好太郎
実家が工務店を営んでいて、遊び場は作業小屋。
そのため子供の頃から木に触れて育った。
大工が1本の木を変幻自在に加工し、意味のある姿に変える様は木の可能性を教えてくれ、
私の方向性を決めるものだった。
現在、私は木を使って建築をつくる設計事務所とそれらを自ら施工する家業の工務店、
その両方を運営している。
知ってのように、日本は先進国の中でも有数の森林大国でありながら、
輸入材の影響や後継者不足などの理由で林業は衰退し、
薄暗い荒れた森が目立ってきた。
短時間では森はできない。何代にもわたり森をつくり、
一度手を入れた山は人間と共存していかなければ死んでしまう。
私たちの作業小屋には、祖父の時代に購入した木材が出番待ちをしている。
1~2年で使える木もあるが、落葉樹はそうはいかない。
何年もゆっくり環境に馴染ませるのである。
そうすることで、素材その物のよさを発揮してくれる。
私が今、市場で購入している木材の一部は3代後のための木材である。
私たちの使命は、さらなる木の可能性や魅力を引き出すことなのだと考えている。
安齋好太郎 Anzai Kotaro
Wood creator / 建築家 Life style工房 代表取締役。
2012年竣工の一般住宅「CAVE」で、2013年日本建築士会連合会賞奨励賞、
LIXILメンバーズコンテスト新築部門で大賞受賞。
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