河井良治
コミュニケーション最適化のためのプログラム。第5回に続き第3ステージ『どう伝えるか?』…施策・アクションや各種のメディア・ツールへの展開について。
まずは前回の整理から。
ターゲットにおける住宅購入・建て替え・リフォームの発注先を決める行動と意識のフロー(=理想)に対して、現実とのギャップから課題とすべき領域をピックアップ。それらに優先順位をつけたうえで、スケジュールと改善策を打つ手順を組み立てる。ここまでがひとつめのテーマ「①運用・管理」の設計。
今回は「適材適所」を考慮したコミュニケーション手段・方法の具体化とその内容・表現の設計のポイントに関して話を進めます。
②メディア・ツール設計
メディア・ツールおよび施策には、当然ながらターゲットへのフィット感や情報の届き方・成果の出方において個々に特性があります。
例えば、新聞折り込みチラシは新聞購読率の低い若い世代には不向き。ホームページは便利な情報発信メディアではあっても、やはり年配の方には扱いにくいうえ、作っただけではダメで、そこにアクセスさせる誘導策が別途必要だったり検索で上位にランクさせる工夫が必要だったり。とりあえずウェブサイトを立てとけば…とか、とにかくパンフレットは作っておかないと…ではなく、それぞれの課題に対して最も効果的なものを選択すべきです。
誰が、いつ、こんな場面・こんなタイミング・こんな目的で使って、こんな結果を期待しているから…このメディア・このツール・この施策で行こう! 「使われ方」と「期待成果」、そして併せて「相乗効果」の観点から、手法検討にしっかりと踏み込んでおきましょう。この部分を整理しておくと、後にそれぞれに掲載する情報のカテゴリーとコンテンツが格段に決めやすくなるはずです。
ここでのポイントをいくつか…
●基幹ツール(Webサイトやサービス紹介パンフレット)を改めてどう機能させるか?
●集客や既存のWebサイトへの誘導として、手軽に作成可能なランディングページやキャンペーンページなどをどう有効活用するか?
●「コミュニティ化」を優先課題とするのか?そのための施策をどう有機的に継続化するのか?(イベント・情報誌・DM・メールマガジンなど)
● パブリシティやウェブのニュースサイトなど広域のPR施策をどう見ていくのか?
個別の案件に携わった場合、この段階で「コミュニケーションプランマップ」というものを作成しています。簡単に言うと横軸がカレンダー、縦軸が設定した各種メディア・ツール・施策の表。それぞれの進め方や組み合わせ、補完関係・リンクの仕方、一定期間内での頻度や改訂・更新のスパンなどを俯瞰的に統合しまとめたものです。
③表現・構成設計
まずはコンテンツ。発信する情報の構造や施策のテーマ・内容の設計。
図式化したフローと課題別にメモを加えたシートに返りましょう。そのツールや施策と接点を持つ時点でのターゲットの目的は何か?欲しがっている情報は何か?…その起点さえ外さなければ構成や編集のプランは意外と容易です。
『USP』や「メッセージ」、それらを具体化する際に抽出されたキーワードを、単にコピーの要素として使用するだけでなく、ツールの表現全体のガイドラインとして活用していくことで、よりわかりやすく強い世界観を創ることが可能になります。
その情報の組み立てでメリットは充分に伝わる? その強みアピールの言い回しだとターゲットに難しくない? その写真やイラストのイメージは『USP』っぽい? その色使いは「メッセージ」と雰囲気が合ってる?…といった小さい検証を重ねていく感じです。
ツールや施策が多岐にわたる場合は、表現における主な要素を定義したものを事前に作成。関係者間での理解の促進とズレの防止に役立ちます。
これもポイントをいくつか…
●カラーリング
→コーポレートカラー(ブランドカラー)をどう活かすか?
→キーカラー(=コミュニケーションカラー)をどう開発するのか?
●フォトイメージ
→どんなシーンをどんなイメージで撮影するのか?
→雰囲気重視か? リアリティ・ドキュメンタリー重視か?
●デザイントーン
→レイアウトのパターンはかっちり? カジュアル? など
→要素のバランス(読ませる? 見せる?)
→イラスト・ピクトの感じは?
→ユニバーサルデザインへの配慮レベルは?
●フォント(文字の書体)は?
●コピートーン(タッチ・文体)は?
●ロゴ・マーク・キャラクターは?
■「伝える」から「伝わる」へ
6回に渡って連載させていただいた「ブランディング」の考え方とそれに基づいた「コミュニケーション最適化」のための進め方講座も今回で最終回。最後にまとめとしてもうひとことだけ添えさせてください。
ビジネスとしてのPRや販促活動において、言いたいこと・主張したいことをアピールするだけではターゲットとの関係性は結局一方通行です。
ターゲットが知りたいこと・聞きたいこととその欲しい状態やタイミングを把握する。同時に自社のポジションをきちんと分析し、そこから見えてくる自社・自ブランドの「強み」や「魅力」を発信する。しかも、それがターゲットにとっての「メリット」が理解できるカタチに翻訳されていて…。そこにこそインタラクティブな関係が生まれ、快適かつ効果的なコミュニケーションが成立します。
「伝える」から「伝わる」への進化が、ブランディングのゴールなのです。
普段個別に携わる案件では、多様な条件や事情も絡みもっと複雑で多岐にわたるプロセスになってしまうのが実態です。今回の連載では短期ということもあり、その手順の芯の部分を選り、できるだけわかりやすく解説したつもりですが、ことば足らずの個所も多々あったのではないかと反省もしています。ただ、ビジネス・コミュニケーションをよりよくするための大事なエキスと実践的なポイントだけは紹介できたのでは…と。今後の改善や問題解決の一助になればとても嬉しい限りです。
また、より具体的な形での改善や再編をお考えであれば、改めてお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。短い間でしたがお付き合いいただきありがとうございました。
河井 良治 Kawai Ryoji 「株式会社クリエイティブ・ユニティ」コミュニケーションデザイン部門マネージャー コピーライターからクリエイティブディレクターを経て、プランナー・プロデューサーとして、ブランディング・プロモーションなど各種ジャンルの戦略プランニングや設計のためのメソッド開発を中心に活動。本連載もオリジナル・パッケージ・メソッド『Re:Brandest』をベースに寄稿。現在、住宅メーカー・車輌関連サービス業・学校法人・商店街など個別のブランドPR案件も推進。30数年の企画の現場で携わったプレゼンテーションは650件超。心理学の領域での経験や知見を活かした実践型セミナーや学校での講演・講座等も担当。
http://www.creativeunity.jp
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