河井良治
5回めは、3つめのステージ『どう伝えるか?』。施策・アクションや各種のメディア・ツールへの展開について必要なことを具体的にしていきましょう。
キーワードは「適材適所」と「優先化」。課題としての重要度・緊急度の高いところから計画的に着手し、目的にジャストフィットする方法と表現を選ぶこと。「最適なコミュニケーション」の実現に向けての仕上げです。
■理想と現実のギャップ…そこに「課題」が
本題の前に大事な準備を済ませておきます。
有効な改善策を具体化するために絶対に避けて通れないベクトルがあります。
「問題」→「課題」→「改善策」
問題である事情を明らかにし、それを「どうすべきか?」という課題に転換して初めて、対策としての輪郭が浮き彫りになってくる。ということで、まずは自社の営業活動や販促・PRにおける問題と課題、そしてそれがどんな領域にあるのかをはっきりさせましょう。
『誰に』のステージの最後に図式化した、ターゲットにおける住宅購入・建て替え・リフォームの発注先を決めるための行動プロセスと意識のフロー。そこで登場した各種の情報発信のためのメディア・ツールの活用のされ方がある意味での「理想」。
一方で『何を』のステージの自社分析で整理した、現状の営業・販促・PR活動の実態と評価が文字通り「現実」。
その理想と現実にはどうしてもギャップが出てきます。図式化したフローのギャップの発生している個所に大きく○を。それが「問題」。そしてギャップを最小限にするために見えてくる問題解決の手掛かりが、言わば「課題」。
フローの上に記した○単位で別紙を用意し、それぞれのシートに「この領域のこの部分をこう変えたらいいんじゃないのか?」という観点から強く意識しておきたいことを記入します。これで課題から改善策の原案=検討材料の準備完了。
ここからがいよいよ本題。以下の3つテーマについて、『どう伝えるか?』の合理的で効果的な設計を組み立てていきましょう。
①運用・管理設計
どんな優先順位で進めるか?
どんなスケジュール・手順で進めるか?
②メディア・ツール設計
どんな手段・方法で伝えるか?
どんな規模・バランスで進めるか?
③表現・構成設計
どんな内容で各施策を推進するか?
どんな表現で各ツールを作成するか?
では、テーマその1から。
①運用・管理設計
前項での準備の結果、当然ながら複数の課題が出てきます。とは言え一度に対処するのはなかなか難しいはず。そこで「優先順位」をつけましょう。理想と現実のギャップが特に大きいもの、問題として深刻なものを先に。また、自社のビジネスの流れの中でより困っている領域のものを優先化します。
例えば…
セールスアプローチをするためのターゲットの母数が少ない。つまり「集客」で悩んでいるのか?
アプローチしたターゲットが成約に結びつく確率が低い。いわゆる「クロージング」が弱いのか?
それとも既存のお客さまから次のターゲットへの紹介や口コミに繋げていく「リレーション強化」に着手できていないのか?
メモの書き込まれた図式化フローを前にじっくりと検討してみましょう。
ちなみに私見としては、標準的な見方をすれば今後課題としての重要度が高まるのは「リレーション強化」。ビジネスの基本スタイルがエリアマーケティングであること、新築着工数の頭打ちが予想され客単位での取り扱い額の維持やアップセルが必須となること、金額の高い買い物であるため経験者の意見が購買の判断に影響しやすいことなど。既存客・成約客のファン意識を醸成し良好な関係を継続させていくことが必要である理由や背景が、ここ数年でどんどん顕在化している気がしています。
次は「スケジュール」と「手順」。先に決めた優先順位に従い、どの課題の対処をどの時期・どの期間に実施するかの目安を設定します。
そしてそれぞれについて…
●どこまでを自社内のリソースで運営するのか?
●誰が運用の責任者になるのか?
●どこからどこまでの範囲を外部に依存するのか?
●どんな形で進捗の把握や調整の管理をしていくのか?
●自社内のどんな既存の情報やネタが使えるのか?
●新たに準備しなければならないものは何か?
…といった要素を決めながら各シートにメモを付加していきます。
以上が「①運用・管理」の設計について。今回はひとまずここまで。
次回は『どう伝えるか?』の続きとして「②メディア・ツール」並びに「③表現・構成」の具体化を。いよいよ最終の各論設計です。
引き続きお付き合いください。
河井 良治 Kawai Ryoji 「株式会社クリエイティブ・ユニティ」コミュニケーションデザイン部門マネージャー コピーライターからクリエイティブディレクターを経て、プランナー・プロデューサーとして、ブランディング・プロモーションなど各種ジャンルの戦略プランニングや設計のためのメソッド開発を中心に活動。本連載もオリジナル・パッケージ・メソッド『Re:Brandest』をベースに寄稿。現在、住宅メーカー・車輌関連サービス業・学校法人・商店街など個別のブランドPR案件も推進。30数年の企画の現場で携わったプレゼンテーションは650件超。心理学の領域での経験や知見を活かした実践型セミナーや学校での講演・講座等も担当。
http://www.creativeunity.jp
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