長野県神城断層地震の住宅被害はその後の調査で全壊50棟、半壊91棟、一部損壊1426棟(長野県発表12月16日時点)におよんでいる。現時点で一人の死者も出していない対応は、今後の防災のモデルケースになり得るといえるだろう。注目されているのが、住民のコミュニティー意識に支えられた助け合いのしくみだ。
今回の地震では、倒壊した家に閉じ込められた住民の多くが近所の手助けによって自力で脱出した。
白馬・小谷を管轄する北アルプス広域北部消防署は常時緊急出動できる車両が2台、人員7~8人の体制。うち1台が地震当日、倒壊の集中した白馬村堀之内地区で救出活動を行い2人を助け出した。逆にいうとそれ以外の人は隊員の手を借りずに出てきたわけだ。
「山間地では、レスキューのプロが足りているわけではない。自然災害に際しては自分たちで身を守るのが大原則。そうした意識やつながりが田舎にはまだ残っている。『美談』のように語られるが、住民にとってはそう驚く話ではない」と同署の長﨑喜治署長はいう。
高いコミュニティー意識と強い結び付き、加えて白馬村には、4年前から作成している「災害時住民支え合いマップ」がある。災害時の自力避難が困難な高齢者や障がい者の住宅を地図に落とし込み、誰が手助けするかを決めて、地域住民で共有するもの。安否確認や救助、支援を迅速に行う手段として活用する。
「マップの作成や更新を通じ、誰がどこにいるかお互いにわかっていて、普段から声をかけ合う。何かあったときも『あの家にはお年寄りがいる』『あの家には何人住んでいる』と、明快な指示が可能。そうした備えが死者ゼロにつながった」と、白馬村社会福祉協議会の山岸俊幸事務局長は話す。
「災害時住民支え合いマップ」は、長野県が2005年から独自に策定を促してきた。今年3月末時点で県内77市町村のうち66市町村が取り組み、白馬村では目標29地区中16地区が策定済みだ。堀之内地区も4年前にマップを作成し、更新を行ってきている。
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