塩ビ工業・環境協会は「環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム」を11月20日東京都内で開催した。
住宅・建築のエンベロープ(外皮)を環境配慮時代に相応しいものに転換しようと2012年から毎年開催している。3回目となる今回は、既存住宅の省エネリフォームについて集中的に議論した。
前半の講演では住宅評論家の南雄三氏、(株)寺尾三上建築事務所代表の寺尾信子氏、(株)アール・アイ・エー参与の花牟禮幸隆氏が講演した。このうち南氏は、現状で外皮性能向上リフォームが進まない理由について、1)リフォーム自体が少ない、2)居住者が動かない、3)業者に意欲がない、4)施工が難しい、の4点を挙げ、その背景にある課題として市場に「中古流通がない」、住まい手に「我慢の小エネ」、また業者に「信用がない」「新築ボケ」「断熱技術不足」の問題があると整理した。
また南氏は、外皮性能向上リフォームの提案方法として、日本の生活者は寒さを我慢する傾向があり外皮性能向上リフォームをしても暖房費の削減効果が少ないことから、冷暖房費を削減できる「省エネ」よりも、断熱性向上による「健康の改善」をアピールしていく必要があると訴えた。また寺尾信子氏も、自社事務所の改修経験をもとに、外皮性能リフォームは省エネよりも「生活の質の改善」効果が高いことを強調。普及のためにコンサルタント業務の必要性を訴えた。
後半のパネルディスカッションでは、「省エネ・健康リフォームをいかにして普及するか」をテーマに、喜多ハウジング代表の喜多計世氏、プレハブ建築協会住宅ストック分科会代表幹事の浴野隆平氏、住宅医協会理事の三澤文子氏、LIXIL営業企画統括部ハウジング企画部部長の吉田格氏、日本モーゲージサービス代表の鵜澤泰功氏の5人のパネラーを登壇し、議論した。
このうち鵜澤氏は、住宅需要を喚起する根本的対策は「住宅をお金に変えること」にあると指摘。現状で最も具体的な手法として、インターネット上で一般住宅の空き部屋を旅行者に短期貸出できる仲介サービス「Airbnb」など幾つかの事例を紹介。全国に広がる空き家をインターネット上で公平に市場価値の振るいにかけながら、旅行者や多拠点居住を望む都市生活者の資金をもとに再生していく手法を提案した。
また三澤氏は、今後住宅の資産価値が問われるなかで、「耐震」や「断熱」など特定分野に絞ったリフォーム工事が普及しつつあることを懸念。雨仕舞い・シロアリ対策などまで含めた改修の知識と技術を工務店などが身につけ、包括的な性能向上リフォームを提案すること、またその技術を新築にも生かしていく必要があることを改めて強調した。
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