11月22日、長野県北部でマグニチュード(M)6・7の「長野県神城(かみしろ)断層地震」が発生。長野市や小谷村、小川村で震度6弱の激しい揺れを観測し、信濃町・白馬村でも震度5強を観測した。震源の深さは5㎞。住宅被害は全壊・半壊・一部損壊合わせて505棟におよび、重軽傷者45人を出した。死者・行方不明者は0だった(長野県発表11月25日時点)。
強い揺れ全壊少なく
今回の地震は強い揺れが広範囲を襲ったが、住宅が全壊する大きな被害は31棟にとどまった(11月25日時点)。
一般的に木造住宅の被害は、周期1秒付近の地震動がパワーを持って入ってきたときに大きくなる。東京大学地震研究所の古村孝志教授によると、白馬、信濃で観測された地震動は周期0・3秒程度の小刻みな揺れが突出。信濃、戸隠では周期1~2秒の成分も含まれていたが「そのレベルは新潟県中越地震の小千谷地点の1/4程度だった」という。
強い揺れでもごく短い周期成分が多く、木造住宅を壊したり変形させたりする地震動は、全体的には大きくなかったとみられる。
震源付近に局地的被害
今回動いたとされる神城断層は、すでに存在が知られていた活断層。糸魚川-静岡構造線の北部に位置し、約30㎞、小谷から白馬、大町を南北に通る。信州大学の大塚勉教授らは白馬村内を現地調査し、ズレ動いた断層が地表に露出している個所を7㎞近くにわたって発見。神城断層の位置とほぼ一致することを確認した。
「ズレがこれほど地表に出てくるのは珍しい。直上は水田地帯で地盤が悪いが、一部では民家も建っていて、被害を出している」と大塚教授は話す。
ただ、今回最も大きな被害を受けたのは、そこから1㎞ほど南東に位置する堀之内地区。住宅の全壊の多くは同地区に集中している。
「山際の傾斜地で水がつきにくい場所。なぜ被害がここだけ局所的だったのかは調査を経ないと何ともいえないが、地盤が悪かったのかもしれない。また表層は固くても下に水を含んだ地層があれば、それも揺れやすさの原因になる。結論は出せないが、さまざまな条件から局所的な被害様相はあり得ることを念頭に置くべき」
土地に応じた対策
今回の地震は、今後30年以内にM8クラスの地震が起きる可能性が14%と指摘されている糸魚川-静岡構造線断層帯の一部で発生。またそこは、山形県庄内地方から兵庫県南部にかけての「ひずみ集中帯」にも位置する。
ひずみ集中帯は、日本列島下の4つのプレートの力の方向が変わる境界域。帯状に分布するそのエリアでは地震エネルギーが蓄積しやすいとされ、最近では新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、長野県北部地震などが短い間隔で起きている。
前述の大塚教授は「神城断層と同じような力がかかっている活断層は、いつ動いてもおかしくない」といい、今後は一律の解決策ではなく、住む場所に合わせたリスク対策が重要と指摘。「水がつきやすいか、地盤が軟弱か、揺れやすいかなどを把握し、個々の状況に応じた対策を取る。それには行政の支援も必要。いまやっと、そうした情報を活用できるようになってきた段階」とする。
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