お客様にとっての「良い家」とは?
ジャパンホームショーで体験できるワーク。130色カードから直感で10枚選ぶと色の好みの傾向が分かる打ち合わせで満足度UP
技術力やプランニング力、デザイン力に自信があれば、お客様の言う「良い家」がつくれるとは限りません。
何がその人の求める「良い」なのかを把握し損ねたら、自社の強みを生かすこともままならない。顧客満足度を上げる鍵は打ち合わせにこそありますお恥ずかしい話、10年あまり前にインテリアコーディネーターとして働き出した頃の私は、最新機器や流行のデザイン、自分が素敵と思うインテリアを打ち合わせ時に提案していました。
でも大抵の場合は「なんか違う〜」という反応が返ってきたのでした。そんな数々の痛い経験を経て、建築業界の常識や私(提案する側)が思う「良い」ではなく、住まう方にとっての「良い」でなければダメだと気づいたのです。
でも、今度はお客様にとっての「良い」をどう把握すればいいのか悩みました。構造や間取りなどはお客様自身が具体的な希望を伝えてくださるものの、内外装のコーディネートになると「ステキにして」「心地よい部屋にしたい」など、感覚的な希望ばかりで途方に暮れることも。
服装・持ち物に好みは出やすい
好みの色を選んだシートをグループで見せ合う。人の好みはまさに「十人十色」と実感できる瞬間
そこで私は打ち合わせの時、話に耳を傾けるだけでなくお客様を観察するようにしました。
外壁決めをしていたある日、その方がいつも紺色の服を着て来ることに気づき、紺色のサイディングサンプルを見せたら「ステキ!これいいね」とおおいに気に入ってもらえたうえ「後藤さんセンスいいね」との言葉まで頂けました。
それまで褒められたことがなかったのでちょっと心外でしたが、センスがいい提案とは、お客様の好みを反映した提案である、とこの時に深く悟りました話を聞くだけでなく観察もこれをきっかけにお客様の服装や持ち物は必ずチェック、そこから好みを知るヒントを探しました。
例えば、いつも持っているカバンがあったら「このカバンの好きなところは」と尋ねます。私の経験から言うと、モノが取り出しやすいなどと答える方は機能性、見た目で選んだと答える人はデザインにこだわる傾向が強いように感じています。
大抵、質問は1回で終わらず「デザインの中でも色、形、素材のどこが一番良くて選んだのですか」と、その方の好みの輪郭がハッキリしてくるまで掘り下げていきます。「丸味をおびた形がステキだから」との言葉が引き出せたとしたら、この方にテーブルをお勧めするとしたら角は丸いデザインの方がいいだろうと考えます。
他人の好みを引き出すには自分の好みを知る
ルームスタイリスト認定講座のマスコットキャラクター「わかちあい君」。胸から取り出しているのはセンスの種。持ち物やそれを選んだ理由などから、当人も無自覚な感覚的な好みを引き出していく–。
このやり方は顧客満足度を高めるだけでなく、実は私自身の部屋づくりにも役立っています。
悩みや迷いが生じた時は例のやり方で自身に客観的に問いかけていきます。
私はこれらの経験を広く伝えようと3年前に法人を立ち上げ、模様替え資格認定講座「ルームスタイリスト」を全国で展開中です。
今年9月末で約1300人が受講してくださっていますが、年代は10代から70代まで幅広く、住まいに関わる仕事している人とそうでない方の比率は半々。男性も1割います。
ワークでコツを会得
雑誌から気になる写真や文字を切り取って自分の好みを読み取るワーク(今回は行いません)
型紙で部屋のレイアウトをつくってみるワーク(今回は行いません)
講座では知識やテクニックの紹介以上に、自分の好みを知るためのワークを重視。
立場も年齢も異なる受講者が互いに選んだものや作品を見せ合っておしゃべりを楽しむ中で、他人との違いを知り自身の好みが鮮明になってきます。
また、仕事をしている受講者から「お客様が何を考え困っているかよくわかった」との声がよく聞かれます。
今回のジャパンホームショーでは私の体験談をお伝えするほか、ルームスタイリスト認定講座の数々のワークの中から一番人気の「好みの色を知るワーク」を特別に体験していただきます。
仕事で他人の家づくりに忙しくしていると、自分のことが疎かになりがち、たまにはご自身の好みを振り返りませんか。
人の好みを引き出す秘訣は、何よりもまず自分の好みを引き出す体験をすることです。
後藤 史恵
ルームスタイリストプロ/一般社団法人十人十色の部屋づくり推進会
新米主婦時代に2DKの賃貸アパートでの部屋づくりに悩んだことでインテリアの勉強を本格的に始め、その後建設業界に転職。新築・リフォームの現場に携わってきたが、もっと日常的な部屋づくりの悩みに応える仕事がしたいとフリーになり、模様替えのアドバイス業を行ってきた。この活動を全国に広げるため法人設立。ルームスタイリスト認定講座はかっての自分が求めていた講座を形にしたもの。
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