小山武
家づくり援護会は家づくりの悩みを抱える方々への支援活動を行っておりますが、NPO設立当初から業者選びにまつわる相談は後を絶たないテーマとなっています。
業者についての相談を類別すると「業者を選べない」悩みと「選んだ業者に裏切られた」悩みの二つになりますが、正しい業者選択ができないという意味で根は同じと言えます。
なぜ、業者選びは難しいのか。相談者からの話を聞いていて強く感じるのはインターネットの影響です。多くの方はインターネットを通じて業者選びをしていますが、これが混乱を招く原因になっているように感じられるからです。
例えば省エネ住宅を希望する人がネットで検索すれば直ちに何十社という工務店の検索が可能です。しかし、この検索結果を正しく評価、判断して業者を選ぶ作業は専門家でも容易ではなく、仮に評価できてもそれにどんな意味があるかは議論のあるところです。相談者に真意を確かめると、本気で性能や工法についての評価を求めている人は少なく、どちらの会社がより信用できるか、それを確かめたいというのが本音なのです。
業者選びではハウスメーカーに家づくりを頼みたいがどうか、という相談も多く頂きます。「なぜ、ハウスメーカー?」と聞くと、彼らは「だって安心でしょう?」と答えます。しかし、ネットを開けば、ハウスメーカーに対する欠陥住宅問題や、消費者無視の強引なやり方への批判が溢れています。現に家づくり援護会が関わる住宅トラブルや悩み相談の90%以上はハウスメーカーや建売業者によるものですから、ハウスメーカーに対する信頼感も揺らいでいるのです。自分では「だって安心でしょう?」と言いながらも不安は消えず第三者の賛同を求めているのです。
もうお分かり頂けたと思いますが、顧客が業者を選ぶ核心は工法や性能にあるのではなく(もちろん有るに越したことはないのですが)、いかに「安心」が担保されるかという点に最大の関心があると分かります。巨額の借金を背負って決意した家づくりです。何よりもまず「安全」を求める心理は理解できます。工務店の方々には技術競争にばかり目を向けず、どうすればお客様に「安心」を届けられるか、それが経営の生命線であると強く認識していただき、おおいに知恵を絞っていただきたいと願っています。
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