五十嵐 拓
『HOME’S』のような不動産・住宅情報サイトでは、その物件の「写真」が明暗を大きく左右します。写真は人に大きな印象を与えるので、物件広告において非常に重要なポイントですが、物件の魅力がきちんと伝わるような写真は全体のわずか1~2割しかありません。一方で、お客様からの問い合わせを多く獲得している物件の写真を分析していると、いくつかの共通点を見出すことができます。本コラムでは、これまでの分析によって分かった、単なる「美しい写真」の撮り方ではなく、物件の魅力をきちんと伝え、物件広告として問い合わせにつながりやすい写真の撮り方をご紹介していきます。
正しい写真の撮り方を見につけて頂くことで、成果につながり、仕事の幅を広げるきっかけになればと思います。
なお、こちらで学んだ内容は今日からすぐに実践して頂けるよう、一般的なコンパクトデジタルカメラ(以下、デジカメ)で解説していきますので、普段ご使用になっているカメラをお手元にご用意してご覧ください。
まず、1回目は、問い合わせにつながる物件写真を撮るための「カメラの設定」をお伝えします。少々面倒に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも正しい設定が出来ていなければ、どんなに最新型のカメラを使っても良い写真は撮影できないため、必ず押さえておきたいポイントです。
1.撮影時に毎回行うカメラの設定
毎回行って頂きたい設定は、たった1つだけ!簡単な操作で見違える写真を撮影することができます。
まずは2枚の写真をご覧ください。
どちらの写真も、「明るさ(露出補正)」「ホワイトバランス」等の設定は、全て「自動」を選択し、全てをカメラに任せて撮影したものです。その結果、A-1は室内が、B-1は外観が暗くなり、本来物件写真で見せたい個所が分かりづらい写真となってしまいました。
次にこちらの写真をご覧ください。
これは、さきほどのA-1、B-1とカメラ・時間帯・撮影位置は全く同じ条件で撮影したものです。
カメラ設定の「明るさ(露出補正)」を調整しただけで、写真の仕上がりがここまで大きく変わり、室内、外観が分かりやすく伝わる写真になりました。
最新のカメラには様々な機能がついており、カメラの設定を調整するとなると難しいと感じる方もいるかもしれませんが、物件写真の撮影には、この「明るさ(露出補正)」の調整だけで十分です。
では設定方法をご紹介します。
操作は、カメラの露出補正設定画面で、「+側」に調整するだけです。+1、+1.2、+2と値が大きくなるほど明るく撮影することができ、「-側」は物件撮影で使うことは滅多にありません。参考値として、屋内では「+1」、屋外では「+0.3(+1/3)」をおすすめしていますが、場所や天気により状況は異なりますので、まずは参考値に設定し、バランスをみながらその都度調整してみてください。
メーカーや機種により、設定方法は異なりますが、ほぼ全て機種に明るさを調節する機能はついているので、分からない場合は、カメラのマニュアルを開き「露出補正」「明るさ補正」「EV補正」等の項目を参照して下さい。
これまでこの機能を使っていなかった方には一手間増えてしまいますが、この一手間をかけることで物件をより一層魅力的に撮影することができるため、必ず毎回設定するようにしてください。
また、この調整を正しく行えば、暗い部屋でもフラッシュを使うことなく撮影できます、フラッシュを使うと、ガラス面に反射を起こしたり、影が出来たりするため、基本的には発光禁止にしておくことをおすすめします。
2. 1度だけ行うカメラの設定(初期設定)
(1)静止画アスペクト比
これは写真の縦横の比率を調整する機能です。一般的には4:3や3:2に設定されているため、特に気にする必要はありませんが、もし「16:9」等、横長の写真を撮影している方がいれば、設定を変更することをおすすめします。
「16:9」は横長なので、一見4:3の写真よりも撮影できる範囲が広いように見えますが、実際には4:3の写真の上下をカットしただけなので、むしろ撮影範囲は狭くなっているのです。
「16:9」とは最近の液晶テレビのサイズ比率であり、液晶テレビに映したときにサイズぴったりに映し出すことができますが、物件写真の撮影には不向きです。カメラのメニュー画面から「静止画アスペクト比」というような項目を探し、変更してみてください。
(2) グリッドライン(格子線の表示)
これは設定すると画面上に縦2本・横2本の垂直線が表示される機能で、この線を被写体に合わせることで、三脚を使わなくても傾きなく撮影することができます。
まずは、良くあるNG例をご覧ください。
せっかくの新築物件にも関わらず、斜めに傾いて撮影されており、物件写真として見栄えがよくありません。
次に、このグリッドラインを使って撮影した写真です。
縦の線を、壁の角の縦線等に合わせて撮影するだけで、垂直に写真を撮ることができます。
もちろん三脚があれば問題ありませんが、いつも三脚を持ち歩くのは大変なので、ぜひこの機能を活用してみてください。
設定方法は、カメラの「DISP」というボタンがあれば、何度か押すことで画面にグリッドラインが表示されます。もしボタンがない場合は、こちらもメニュー画面やマニュアルから確認してみてください。
3. 物件撮影における、一眼レフとデジカメの違い
一般的な一眼レフとデジカメの大きな違いは、「画質」と「画角(視野角)」です。このうち「画質」については、一眼レフで撮った写真のほうがデジカメよりも高画質ではあるものの、チラシやインターネットに掲載する物件写真は、デジカメの画質でも十分対応可能なため、大きな差はありません。
一方、「画角」については、一眼レフのレンズを「広角レンズ」に交換すれば、デジカメよりも広域な範囲で物件を撮影できるというメリットがあります。
その違いをこちらの写真をご覧ください。
Aのように一眼レフ+広角レンズで撮影した場合、全く同じ立ち位置から撮影をしても左側のドア1つ分の差が出ます。これが物件撮影における、唯一の一眼レフの強みです。
今回の講座はここまでです。
次回以降は、リビング、キッチン等、実際の撮影方法をご紹介していきますが、あくまでも一般的なデジカメを使い、どのように魅力的な写真を撮るかを解説していきます。次回もぜひご覧ください。
※本コラムに掲載した写真はすべて「NIKON P330」で撮影したものです。
総掲載物件数No.1(※フジサンケイビジネスアイ調べ(2014年3月31日掲載))の不動産・住宅情報サイト『HOME’S』にて、年間2000人の受講者を誇る「HOME’Sカレッジ」の講師を7年にわたり担当。「HOME’Sカレッジ」では、『HOME’S』の運営でこれまで培ってきたノウハウを生かし、メール対応、インターネット広告の活用等、業界に特化した幅広い知識で、課題解決をサポートする。 「HOME’Sカレッジ」:http://business.homes.jp/college/d01/
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