―伊礼さんとシラス壁とのつきあいは発売前からですか?
伊礼 18年くらい前だったと思います。新留社長がシラスを活用して壁材をつくりたいと言い始めた。それも100%自然素材でいく、と。周囲からは樹脂を混ぜれば簡単にできると言われたようですが、頑として100%自然素材じゃなきゃダメだと譲らなかった。珪藻土なども普通樹脂を混ぜていますが、一定以上樹脂を混ぜると性能ががくんと落ちると言われますよね。100%自然素材の左官材というのは難しい。ぼくは100%自然素材であることと、その頑な姿勢がいいと思っています。
―使い始めは苦労もあったと思います。
伊礼 最初はいろいろ問題が出ましたよね。未知の素材を使った新しい商品だから仕方ないのですが、ぼくもいろいろ提案してどんどん改善されていった。東日本大震災でも、ぼくが使った現場ではほとんど被害はなかった。震度5強だった茨城県の那珂湊の家で内外壁にシラスを塗りましたが、外壁は無傷。内壁は少しヒビが入ったのと、大きな絵を掛けた壁でPBの紙ごとやぶれて破片が落ちたくらい。ペアガラスのアルミサッシがぶっとぶくらいの揺れを考えるとすごいことです。
新留社長はなにか問題が起きても少しもへこたれず、どんどん改良してきた。その行動力はすごいと思います。そんな経験も含めて面白い材料だと思いましたし、開発時から関わっていたので愛着もある。何より本当にいい左官材だから、15年間あたり前のようにつきあってこれた気がします。
新留 15年経ったいまでも改善を繰り返しています。もっともっと良い商品にしていきますよ。
―100%自然素材だからこその安心・安全、風合いの魅力に加え、シラス壁材のもつ消臭・調湿性能はいまの住宅に求められる重要な機能だと思います。
新留 実は最初はその機能にちゃんと気付いていなくて、発売から1年くらい経ってお客様から「よく眠れるようになった」「アトピーの症状が和らいだ」「ぜんそくがよくなった」と言われるようになって。もしかしたらと研究機関に調べてもらったら、研究者のほうがその性能にビックリしていました。「これはいったい何ものですか?」と(笑)。
伊礼 ニオイの吸着力はかなり高いという実感があります。10年ほど前にシラス壁を塗ったお宅に行くと換気扇がいらないと言われますから。ご夫婦ともにヘビースモーカーのお宅に時々遊びに行っても、タバコのニオイがしていたことがありません。
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