NPO伝統木構造の会(増田一眞会長)は、創立10周年を記念して総会とあわせて記念セミナーを8月31日に開催した。
セミナーでは、住まい塾古川設計室(熊本)代表・古川保氏が基調講演。流通木材とプレカットを使い、高断熱・高効率設備を搭載した住宅が主流となるなかで、伝統的木造住宅が長年培ってきた知恵を活かした暮らしの豊かさや、現代住宅が苦慮する木材蟻害や雨仕舞などに対して経験則にもとづく長寿命性、生活時のエネルギー消費総量の少なさ、小さい事業者が集まってつくることの経済や環境面での合理性、などの特長を説明した。
セミナーでは東京大学大学院農学生命科学研究科の仁多見俊夫准教授と、同研究科の稲山正弘教授が講演。仁多見氏は3Dスキャニング技術やGISクラウドなどを活用した森林資源管理システムにもとづく高効率林業について、国内外の事例などをもとに紹介した。
稲山氏は自身の活動テーマとして、中小大工・工務店が主体となる低層中大規模建築物の木造化を全面支援する立場について説明。この分野における現状の課題やその解決策を整理したうえで、これまでの中大規模建築の実績や、法改正を目的とした強度検証の進ちょくを紹介した。
このなかで中大規模木造建築推進のネックとなる高耐力壁(壁倍率12倍相当)が今年度末にもJIS規格としてオープン化されることを報告。これにより住宅用の流通木材・金物・木造住宅用許容応力度計算ソフトを使って、中大規模木造をつくる標準的なシステムが確立することに期待を込めた。
その後パネルディスカッションでは、工学院大学教授・後藤治氏の司会のもと、古川氏、仁多見氏、稲山氏の3氏に、オークビレッジ木造建築研究所(岐阜県)代表の上野英二氏を交えて「かがやく地方の木造建築をめざして」と題して議論を交わした。
当日は、同会が10周年を記念して創設した「伝木賞」も実施。会員が取り組まれた伝統木造の仕事や伝統木構造に関する技術開発・調査研究・ボランティア活動などを表彰した。
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