街中にアートを取り入れた建築物を制作し、身近な視点から住民とともにアートを考え、楽しむ試みが埼玉県で行われている。地域の住民同士の交流の場を生み出す取り組みとしても期待できそうだ。
「小さな家の大きなひろがり」と題されたこのプロジェクトは、「あなたとどこでもアート実行委員会(事務局:埼玉県立近代美術館)」が本年度より実施している文化庁の「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」の一環。移動・組立可能な小屋「旅する小さな家」のアイデアを募集し、最優秀賞1点を予算300万円で実際に制作。制作された「小さな家」は埼玉県内を実際に転々とし、そこを基点としながら、地域住民が自由に参加可能な様々なアート活動を展開するという計画だ。
このたび「旅する小さな家」のデザインを選考するデザインコンペの公開審査会が行われた。応募作品201点の中から入賞作品が決定し、最優秀賞は水谷隼人さんと山本恭代さんの「2つの場所で起こること」が受賞した。
受賞者の山本さんは、「海外を旅行しているときに触れた、何気ない住民たちの様子がヒントになった」と話し、コーヒーショップで飲み物を買った女子高生が、それがあることでいつもより長く街中にとどまり深い会話ができるような、公共の空間を少しだけ特別なものにする建築物を目指したという。
完成記念イベントは11月9日(日)を予定(別所沼公園・さいたま市)。お問合せは、埼玉県立近代美術館内「あなたと どこでも アート」実行委員会事務局まで(TEL:048-824-0110 E-mail:[email protected])。
・最優秀賞1点
水谷隼人+山本恭代「2つの場所で起こること」
・優秀賞2点
鈴木理絵「木の舟、ハンモックのようなゆらりゆれる三日月」
笹本佳史「NAYAの方舟」
・佳作賞4点
松村一樹「階段の家」
小峰彰馬「旅の輪郭」
梅田朋佳「Subliminal Connector」
大峯竣平「絵描きのための小さな〈布の家〉」
・特別賞5点
野見山由美子「光と風を連れて旅する家」
井上唯+黒澤清高+斉藤健+吉田智重「旅をつむぐ家」
萬代基介「スポンジハウス」
下門英治+柿澤高子「サイタマ ミノムシ」
畑克敏+木元洋佑+熊井康博+福井遼+高橋拓海「住宅地のハウス」
・観客賞3点(応募作品展の来場者による人気投票(有効投票数107票))
山本悠介「旅する“入れ子の家”」(8票)
下平万里夫「大自然を旅する美術館」(6票)
入口可奈子「山椒魚の家」(5票)
・審査員
長谷川豪(建築家、長谷川豪建築設計事務所代表)
平田五郎(美術家、五島記念文化賞受賞)
北原立木(小説家、ヒアシンスハウスの会代表)
・コーディネーター
種田元晴(工学博士、一級建築士、法政大学・東洋大学非常勤講師)
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