東日本大震災で被災した中小企業向けの公的な債務負担軽減策、融資、保証制度が整備されている。直接被災した中小企業者だけでなく、被災していないものの震災で事業に大きな影響を受けた中小企業者が利用できるものもある。
■相談ナビダイヤル
制度は以下のとおり対象などが細かく設定されており、分かりにくい。自分がどんな制度をどれだけ利用できるのかをまず把握する必要があるが、それには「中小企業電話相談ナビダイヤル」が便利だ。
最寄りの窓口につながり、資金繰りなどの相談に応じてもらえる。
■債務の負担軽減
現在債務を抱えている中小企業者に対しては、民間の金融機関などが返済猶予や手続きの簡素化・迅速化に対応することとされている。
■融資制度
融資については、日本公庫・商工中金の「災害復旧貸付」が利用できる。直接被災した企業だけでなく間接的に被害を受けた企業も対象。貸付後3年間は借入額のうち1千万円を上限に金利引き下げ措置を請けることも可能だ。
また、平成23年度の資金繰り支援策として整備された日本公庫・商工中金の「セーフティネット貸付」は融資額が大きく、金利引き下げ措置も用意されている。
■保証制度
保証制度についても、各地の保証協会の「災害関係保証」「セーフティネット保証」が利用できる。無担保・全額の保証にも柔軟に対応するとしている。
ただし、融資・保証制度とも審査は行われる。審査の結果、融資・保証額が制限されたり、制度が利用できない場合もある。
1 「中小企業電話相談ナビダイヤル」の設置
■ひとつの窓口で資金繰りなど幅広く相談ができる電話窓口
■最寄りの経済産業局等の中小企業課につながる
■TEL0570-064-350(9:00~17:30)
2 被災した中小企業のすでにある債務の負担軽減
①民間金融機関の返済猶予など対応(金融庁・日本銀行が民間に要請)
返済猶予など既往債務の条件変更に柔軟に対応
②日本公庫・商工中金の負担軽減策
被災後、返済期日が到来していても、返済猶予の申込みすら困難な状況が続くことが予想されるため、遅れて申込みをした場合でも、遡及して返済猶予に対応
③手続きの簡素化・迅速化
本人確認等の審査書類の簡素化、契約手続きの迅速化等を通じて、窓口における親身な対応、適時適切な貸し出し、柔軟な条件変更を要請
3 直接被災した事業者・間接的に被害を受けた中小企業向け災害復旧貸付
①制度の概要
長期・低利の資金(設備資金、運転資金)を融資するもの。
②制度の内容
■貸付限度額:
日本公庫中小事業1.5億円、日本公庫国民事業3千万円(別枠)
商工中金1.5億円(別枠)
■貸付利率:
日本公庫中小事業1.75%、日本公庫国民事業2.25%
商工中金1.75%
貸付期間5年以内の基準利率(平成23年3月12日時点)
③特別措置の対象者
■直接被害を受けた方=事業所または主要な事業用資産について、全壊、流失、半壊、床上浸水その他これらに準ずる被害を受けた方
■間接被害を受けた方=被災事業者の事業活動に相当程度依存している等の要件を満たす方
以上の中小企業者は金利の通常の貸付利率から▲0.9%の金利引き下げの特別措置を受けることができる。期間は貸付後3年間、借入額のうち1千万円が上限
④申し込み先
日本公庫(沖縄県内では沖縄公庫の支店)または商工中金の支店
4 直接被害を受けた中小企業者向けの災害関係保証
①制度の概要
金融機関から事業再建資金の借入を行う場合、保証協会が保証をつける。
②制度の内容
■保証限度:
無担保の場合8千万円、最大2億8千万円
一般保証と別枠でセーフティネット保証と同枠。融資額の全額を保証する
8千万円を超える無担保保証にも柔軟に対応する
■保証料率:
各協会の規定通り
■資金用途:
事業再建の資金
■保証期間:
個別に各保証協会と相談
■保証人:
原則不要(代表者保証は必要)
③制度の対象者
東日本大震災によって事業所・工場・作業所・倉庫等の主要な事業用資産に倒壊・火災等の直接的な被害を受けた中小企業者
④問い合わせ先
各地の信用保証協会
5 直接・間接的に被害を受けた中小企業者向けのセーフティネット貸付
(平成23年度の資金繰り支援策)
①対象者
環境の変化により、一時的に売上や利益が減少するなど業況が悪化している事業者など(条件あり)
②制度の内容
■貸付限度額:
日本公庫・中小事業 7億2千万円
日本公庫・国民事業 一般貸付とは別枠で4800万円
商工中金 7億2千万円
■貸付利率:
基準金利※5年以内(平成23年3月12日現在)
中小事業1.75%、国民事業2.25%、商工中金1.75%
※特に業況が悪化している中小企業者には最大0.5%の金利引下げ措置
※貸付利率が3.0%を超える場合は金利減免措置あり
■貸付期間:
運転資金8年以内、設備資金15年以内(ともに据置期間3年以内)
③申し込み先
日本公庫(沖縄県内では沖縄公庫の支店)または商工中金の支店
6 直接・間接的に被害を受けた中小企業者向けのセーフティネット保証(5号)
(平成23年度の資金繰り支援策)
①制度の概要
■対象者:
指定された業種に属し、売上高の減少等について、市区町村の認定を受けた中小企業(平成23年4月1日~9月30日については原則全業種(農林水産業、金融業等は対象外)
■保証限度:
無担保の場合8千万円、最大2億8千万円
一般保証と別枠。災害関係保証とは同枠、融資額の全額を保証
■保証料率・保証期間:
各信用保証協会の規定通り
②申し込み手続の流れ
1 利用者の本店所在地の市区町村の商工担当の窓口に認定申請
2 認定書の発行を受ける
3 認定書を持参して、希望の金融機関又は信用保証協会に保証を申し込む
③問い合わせ先
各信用保証協会
中小企業庁の東日本大震災情報ページ→こちら
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