第1回「吉田桂二賞」の授賞式が4日、都内で行われた。第1回は神家昭雄建築研究室(岡山市)の「カイヅカイブキのある家」が受賞した。
同賞は、日本の風土に根ざした木造建築の保存の観点のみならず、それを発展させ良質な景観を創造するという点でも両立する建築の展開を続ける吉田桂二氏の精神を継承すべく、優れた木造建築物と建築家を表彰するもの。吉田氏は受賞建築の論評にて、「この家を初めて見たとき、入る前なのになつかしい思い出が内部を満たしているに違いないと確信した」と評した。そして、「正に期待通りの空間が待ち受けており、また住み手についても自律された心の持ち主であるのが直ちに読み取れた。言葉にすれば『端正』である」と締めくくっている。
また、選考委員である内田祥哉氏は、「玄関の寄りつきは、路地の風情もあるがバリアフリーにも心遣いのある現代風。玄関を踏み込むと、中の懐はたっぷりと広く、来客も、配達もすべてここで対応できるという構えだ。間取りは奥行きが広く、最も奥まったところに、くつろぎの居間を据え、書斎、中庭などが、その陰影で奥行きを演出している。和風と感じさせながら、数寄屋に傾くところなく、材料には外材を使うためらいがない、気楽な現代生活のできる住宅の一つの型を示した秀作」とした。
受賞者の神家昭雄氏は、「以前、岡山の吉田先生の住宅を拝見した際、生活者に対する優しい心配りと、伝統と現代が矛盾することなくそこにあり、『これこそが現代の民家だ』と感激したのを覚えている。先生の書かれた『保存と創造をむすぶ』という著作について、普通保存と創造は相反するものと思うが、赤線を引きながら読んだことを思い出した。『建築は出来上がった時が完成でなく、時間が経つごとにそれぞれの完成があるんだ』というお話に非常に共感したことが印象的だ」と話した。
また今回応募した動機について触れ、「(受賞した)『カイヅカイブキのある家』の施主さんが以前、吉田先生の家を通りかかり、素晴らしい家だと訪ねられたことがあったそうだ。そこから私のところに依頼がきた。不思議な縁もあるものだなと、またこの賞を戴けるなら施主さんも喜んでいただけるだろうと思った。東西に細長い敷地で、施主さんのご年齢もあるので落ち着いた佇まいかつ、日本的であり、今日的な家をつくりたいと考えた。施主さんも、工務店もおおらかで、また職人さんも献身的に仕事をして下さり、本当に感謝したい」と述べた。
同賞の応募受付期間は2014年2月1日~3月末日、応募作数は38点だった。すでに第2回の開催も決定しており、応募受付は2015年2月~3月末日となっている。詳細は事務局の風土社およびrengoDMS/連合設計社市谷建築事務所まで。
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