「つながり」をつくるコミュニティーと工務店❶
大河内工務店[香川県三豊市]
地域に気軽なくつろぎ空間を
ママ友が茶話会できるカフェ
大河内工務店社長
大河内孝さん大河内工務店(香川県三豊市)は「普段使いの非日常」をコンセプトに、地域の人が集まれる時間と空間を10年前から提供している。名付けて「街角リゾート」。普通の生活を送りながらも、若干の非日常的なやすらぎやくつろぎを感じてもらえる居場所づくりを目指す。 最初に手掛けたのは2004年に竣工した「大工館」という本社屋兼イベントスペース。これを格安で貸し出したのが始まりだ。
「人が自然と集まってくれる場所をつくりたかった」と2代目社長の大河内孝さんは話す。
カフェ「木きん堂」の内部はゆったりとしたテーブル配置にし、くつろげるようにした | カフェを使ったイベントも | カフェの一角にはギャラリースペースを設けた |
地域のつながり衰退
大河内さんは、東京の設計事務所やハウスメーカーを経て地元香川に戻り、父親がやっていた工務店に入った。一緒にやり始めた頃、住宅の一次取得層に地域とのつながりがないと感じたことが取り組みの背景にある。
大河内さんが子どもの頃、大棟梁として名が通っていた父親のもとには、住宅の依頼だけでなく夫婦喧嘩の仲裁や地域のトラブルの相談まで何でも持ち込まれた。「そうしたつながりが都市化の侵食により衰退してしまっている」。つながりのなかでの暮らしこそ地域らしいと思った大河内さんは、人が自然につながりをもてる仕掛けが必要だと感じた。
まず取り組んだのはイベントだ。OB施主向けに開いていた「夏まつり」を、誰でも参加できるよう開放した。「来場者の名簿を集めるわけではなく、なんとなくでも『大河内工務店』を好きになってもらえばいい」と思ってやっているという。「支出がかさみ正直迷ったときもあったが、自分たちも楽しめ、地域の人たちも楽しんでくれればいいと思ったら、特に気にならなくなった」。今では小学生チームを対象にしたミニバスケット大会を主催するなど、自分たちも楽しみながら積極的にイベントを企画している。
イベントから場所へ
その後、いつでも来てもらえるようにと建てた「大工館」では、現在、10種類以上のカルチャー講座を実施している。面白さが口コミで広がり、今では多様な技能を持つ地域内の多くの人が講師になっている。
さらに、もっと気軽に立ち寄ってもらえるようにと、2006年に資材倉庫を改修しカフェ「木きん堂」も開設した。「近所にくつろげるカフェがない」という女性の声がきっかけ。開設にあたっては地域の女性30人に集まってもらい、どうしたらくつろいでもらえるかのアンケート調査を実施した。
その結果、店員との接触があまりない「ドリンクバー」スタイルのカフェとして運営。原則、店員は1人だけで、最初に決まった金額を支払うと後は自由に飲み物・食べ物をチョイスしてくつろいでもらうスタイルにした。
幼稚園に子供を預けたあとの母親がママ友たちと来店したり、午後も昼下がりから夕食の準備までの間くつろいだりと、平日でもにぎわいをみせている。年間利用者は延べ6000人。近所だけでなく高松市内から利用する人もいるという。
無料のギャラリーも大人気に
暮らしのそばにいる
カフェ1階の一角には地元のクラフト作家の作品を展示・販売するギャラリーコーナーも併設。1〜2週間を無料で貸し出しているが、半年先まで予約がいっぱいだ。早くも人気のコーナーとして定着した。
「ここで大河内工務店を知ってもらい、好きになってもらうことが狙い。いつでも暮らしのそばにいる会社だと思ってもらいたい」と大河内さんはいう。先代が地域の相談役として頼られたように、コミュニティーで必要とされる存在になることこそ大河内さんの目指す工務店像だ。
「この間、洗濯機が壊れたと電話があった。こちらでは直せないが、とりあえず行った。そんな感じで気軽に声をかけてもらえるような存在になっていきたい」と手ごたえを感じている。
大河内工務店本社の敷地には、一番奥にコミュニティースペースとしてもつかわれる大工館があり、その右にはカフェ・ギャラリー「木きん堂」 | 大工館では、地域の講師による10以上のカルチャー講座が行われている |
大河内社長には、新建ハウジングが主催するフォーラムで講演していただきます。定員制になっておりますので、お早めにお申し込みください。
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