埼玉県住まいづくり協議会は19日、第1回となる埼玉県環境住宅賞を発表した。最優秀賞は「住まい手部門」から、オーガニックスタジオ(代表:三牧省吾氏)設計の「緑がつなぐ家~街並み・コミュニティ・環境・世代~」が選ばれた。
地球温暖化などの環境問題を受け、埼玉県から環境負荷を考慮した住宅と住まい方の工夫を発信するため、「建築部門」、「リフォーム部門」、「住まい手部門」、「アイディア部門」の4分野で、昨年8月から10月末にかけて募集。計72点の応募があった。
選考委員長は日本建築士会連合会・会長の三井所清典氏。審査委員はNPO法人環境ネットワーク埼玉理事・事務局長の秋元智子氏、埼玉建築士会副会長の佐藤啓智氏、埼玉大学経済学部社会環境設計学科教授の外岡豊氏が務めた。
最優秀賞の「住まい手」竹田篤史さんは、「母との同居をきっかけに建て替えを決めたが、柿の木など親の代から残っているものを残したかった」と言い、それに応えてくれたのがオーガニックスタジオだったと話した。その家で生活する中で、祖母から孫へ干し柿をつくる楽しみなど、暮らしの文化が伝わっているのを感じるという。オーガニックスタジオの三牧氏は、「リフォームに携わらせてもらう中で、自分たちも学ばせてもらうことが多かった」と話し、選考委員からも、「親子三代で家から学ぶという住まい方が評価の大きな対象になった」との声があった。
「建築部門」の優秀賞は、一級建築士事務所オノデラヨシヒロ建築設計室の小野寺義博氏の「VOID CUBE」が受賞。シンプルな箱形が美しい木造住宅で、あらゆる方向から光と風を取り入れる設計。選考委員は、「プライバシーの問題など、解決しなければならない課題はあるものの、非常に魅力的な住宅」と評価。小野寺氏は、「光と風の効果を最大限に発揮できるよう通り道を考慮し、それでいてシンプルなものになるよう設計した」と話した。
「リフォーム部門」からは、アルテック代表の阿部勤氏が手掛けた「与野本町の民家」が優秀賞に選ばれた。与野市の100年以上の歴史ある古民家を、落ち着いた趣を残しつつ再生した。「伝統と新しい技術を熟知した設計者と、良いものを後世に残したいという施主との両者の意気込みが感じられる」との高い評価。阿部氏は、「板戸やガラス戸、障子など、色々な結界で外部との環境をコントロールしている、なぜこうした古い住宅が100年もつのか、学ぶべきことが多い」と語った。
「アイディア部門」は、20以上のパッシブデザインの要素が示され、ユーザーが体験しながら学ぶことができる小林建設のモデル展示住宅「コバケン・ラボ」(本庄市児玉町)が優秀賞を受賞。地元木材の利用や薪ストーブ、高効率家電といったたくさんの設備と技術は、かつての施主たちの意見から発展させてきたものという。「企業とユーザーの協働でつくりあげる姿勢が、地域性と居住者のライフスタイルの融合した住宅の実現という期待感につながる」と評価された。
優秀賞の次点である入選作品12作のひとつに、春日部工業高等学校3年生の太刀聖人さんが提案した「ECOについて水から考えた家」(アイディア部門)が入選した。審査委員からは、「高校生と知らずに審査した。高校生でこれだけの発想が出てくるということで頼もしいと思う」と驚きの声が挙がっていた。
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