政府は4月1日に開かれた「第22回国土強靱化推進本部」の中で、2026年度から5年間で実施する国土強靱化の「中期計画素案」(PDF)を公表した。南海トラフ巨大地震の被害想定で、人的被害が最大約29.8万人、資産などの直接被害が約224.9兆円などと推計されていることも踏まえて現行計画を見直し、対策を加速化させる考え。予算については、人件費・資機材価格の高騰によるコスト増大や工期延伸への対応を勘案し、現行の15兆円から20兆円強程度にまで積み増す方針を示した。6月を目途に具体的な計画を策定する。

大規模地震による被害想定(資料より引用)
素案では基本的な考え方として、①災害外力・耐力、②人口減少などの社会状況、③事業実施環境―といった3つの変化への対応に重点を置いた。具体的には、老朽化したインフラの修繕・更新、まちづくり計画と国土強靱化地域計画の連携、広域連携体制の構築と災害時に活用する資機材仕様の共通・規格化などを実施する。
空き家の除却など推進
5年間の計画期間内に実施すべき施策は合わせて324施策で、その内訳は「防災インフラの整備・管理」(57施策)、「ライフラインの強靱化」(107施策)、「デジタル等新技術の活用」(16施策)、「官民連携による対策」(63施策)、「地域防災力の強化」(69施策)などとなっている。
達成目標は施策ごとに異なり、例えば住宅・建築物の耐震化では、緊急輸送道路の沿道建築物(7291棟)のうち耐震化された建物の割合を、2030年までに60%とすることを目指す。また、大規模地震時にも倒壊しない住宅の割合を、30年までに95%、35年までに100%に近い状態にまで高めることを目標に掲げた。
他に、著しく危険な密集市街地の解消や、地域の防災性向上に資する空き家の除却・活用、危険性が高い世帯への感震ブレーカーの設置なども進める。

計画素案で示された目標(一例)
石破茂首相は会合で、「切迫する巨大地震や激甚化・頻発化する大規模自然災害による被害を軽減・回避するためには、国土強靱化の取組を着実に推進しなければならない。特に災害情報や資機材の充実、避難所・ボランティアの環境整備などについては、できる限り早期に完了させる」と述べた。
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