東京商工リサーチ(東京都千代田区)は3月28日、2024年度(4-2月)の「取引先への支払遅延状況」調査の結果を公表した。取引先への「支払い遅れ」は累計1149件(前年同期比13.4%増)発生し、3年連続で増加。2月時点で、すでに2023年度の1111件を超えている。
月間の平均件数は104.5件で、初めて100件台に。2021年度89.9件、2022年度91.0件、2023年92.6件と3年連続で前年同期を上回った。
産業別では、建設業が427件(前年同期比10.0%増)と最多だった。前年同期から件数が増加したのは、建設業、卸売業、小売業、運輸業、情報通信業、サービス業他の6産業。前年同期から減少したのは、不動産業(同24.2%減)を含め4産業だった。
業種(中分類)別では、総合工事業が251件(同4.5%増)、職別工事業が128件(同13.2%増)と、建設関連の2業種が1、2位を占めた。そのほか、道路貨物運送業(56件)など人手不足や物価高などの影響が深刻な業種が上位に並んだ。
資本金別では、1000万円未満が668件(前年同期比27.4%増)と約6割(58.2%)を占めた。「100万円以上500万円未満」が349件(同30.2%増)、「500万円以上1000万円未満」が194件(同11.4%増)、「100万円未満」が78件(同52.9%増)、「個人企業他」が47件(同51.6%増)と、いずれも件数が増加。
一方、1000万円以上は478件(同0.6%減)と前年同期を下回った。特に「5000万円以上1億円未満」(62件、同19.4%減)、「1億円以上」(25件、同21.8%減)で減少幅が大きく、規模による格差が鮮明となった。
過去4年の推移では、「1000万円以上」がほぼ横ばい(400件台後半)に対し、「1000万円未満」は2021年度389件から2024年度668件と1.7倍に増加。経営体力が乏しい小規模企業で支払遅延が大幅に増えていることがわかる。
コロナ禍で停滞していた需要が一気に回復した一方、物価高や人手不足、人件費高騰などから、小・零細企業を中心に経営の厳しさが増している。今後は、利払いも収益圧迫の要因になると危惧されており、支払遅延の企業を起点に、取引企業にも二次被害が広がる可能性がある。同社は、支払遅延の要因に資金調達がスムーズに進まないことがあるとして、金融機関の融資姿勢の変化も併せてみる必要があるとしている。
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