環境省はこのほど、脱炭素につながる国民運動「デコ活」の一環として「ディマンド・リスポンス(DR)」の社会実装に向けた実証事業の結果について報告した。
電力使用量を制御するIoT機器や市場連動型の電気料金プランを導入した場合に、どの程度の電気代が削減できるか、どのように消費者の行動が変化するかなどについて調べたもの。その結果、消費者の行動変容により電気代の削減が可能であることが確かめられた。
近年、再エネの導入拡大により、昼間の電力の供給量が需要量を上回る状況が全国的に発生。昼の余剰電力を有効活用するため、電力利用のタイミングを夜間から昼間にシフトすることが求められている。
今回の実証実験には、Looop社(ループ社・東京都台東区)、Nature社(ネイチャー社・神奈川県横浜市)、関西電力(大阪市北区)の3社が参加した。

記者発表会に環境省および各社担当者が参加
充放電制御で月400円削減可
ループ社は、家庭用蓄電池「SOLABOX」の利用者40人を対象に、太陽光自家消費と市場連動制御を組み合わせた充放電制御による使用電力量・電気代の変化、参加者の行動の変化を調査。その結果、通常の太陽光自家消費モードで蓄電池を導入した場合と比べて、月平均400円程度の電気代削減が可能であることが分かった。特に、「世帯人数が多い」「夕方夜間の消費量が多い」といったユーザーほど、削減効果が大きくなる傾向が見られた。
その一方で、▽昼間に仕事などで外出する場合に活用できない▽使用可能な家電が限られる▽希望する電気代削減額よりも低いーなどの課題が浮き彫りとなった。今後、社会実装を実現するためには制御機器の自動化や遠隔化、メーカーや電力会社などとの連携が重要になるとしている。
自動制御で高い需要を創出
ネイチャー社と関西電力は共同で、昼間の電力需要の創出を目的とした「需要創出型デマンドレスポンス」の実証実験を実施。電力需要の創出が望まれる時間帯に需要を増加させる「上げDR」の検証を行った。機器による自動制御を行うグループ(88世帯)と、需要家自身が手動で制御するグループ(336世帯)に分け、需要創出量などを比較している。
実験には、ネイチャー社の小型HEMS「Nature Remo E(ネイチャーリモイー)」を使用。コンセントに挿すだけで電力の消費状況や電力料金の目安、太陽光発電設備の発電・売電状況などをスマートフォンアプリで確認できる製品で、外出先から蓄電池やV2Hのコントロールが行える。
実験の結果、自動制御では1回あたり0.759kWh、手動制御では0.437kWhの需要を創出。自動制御の方がより高い需要創出効果が得られることを確認した。これにより、1日あたり120.9円程度の収益効果が見込めるとしている。
(※要件あり、再エネ賦課金分なども含む)

「Nature Remo E」
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