手刻みの魅力や大工文化を見直し、次世代への発展的継承を目指して活動する、全国の大工工務店などでつくる手刻み同好会は2月7日、会の今後について考える「korekara会議」を大阪府内で開催した。会場に約80人が集まり、オンラインでも100人が参加。
会の顧問を務める建築家の堀部安嗣さん、山辺豊彦さんによる講演や、「手刻みと手刻み同好会のこれから」をテーマとするトークセッションなどを行いながら、仲間(会員)を増やし、墨付け・手刻みができる「手刻み大工」と手刻みだからこそ実現可能な「日本の美しい木の家」の認知度向上を目指して、これまで以上に活動を盛り上げようと士気を高めた。
会議の冒頭、あいさつに立った同会代表の野池政宏さん(住まいと環境社)は、構造実験(木造軸組耐力壁の破壊試験)や手刻みでつくる小屋の設計・施工コンペ、会員工務店の視察など、2018年に発足してからこれまでの会の歩みと活動を振り返りながら、自らが執筆し、2月1日に発行した冊子『手刻みで家をつくることについて』を紹介した。
手刻みの価値や現在における位置づけについて客観的な視点でまとめた同冊子は、会員の参考資料やエンドユーザー向けの説明書として活用することができる。野池さんは「今後も会のみんなで意見を出し合ってバージョンアップしながら、“手刻みのバイブル”に育てていきたい」と語った。
続いて副代表の羽根信一さん(羽根建築工房)が「手刻みの価値と課題」と題して講演。そのなかで羽根さんは「構造材があらわしになった日本の美しい木の家は、手刻みでなければ実現できない」と手刻み技術の意義と価値を強く訴えた。
羽根さんは、自身が考える日本の美しく良質な木の家の定義として、①美しい日本の木を使っている、②その木が適材適所(強さ・見た目)で使われている、③美しい木の架構(構造材)があらわしになっている、④意匠・構造・技術が協同している―の4点を挙げ、大工は住宅を含む木造建築物における「手刻みの施工責任者」との考えを示し、具体的なスキルとして仕口・継ぎ手の加工設計や木(材種)の選別、使い方(適材適所の見極め)の判断が求められるとした。
そのほかに羽根さんは、生活者に向けた啓発活動も重要とし、手刻みでつくる住宅が耐震や断熱・気密など十分に高い性能を確保できることや、木の家が住む人の健康にもたらす効能などについて、蓄積されている科学的なエビデンスを示すことにより、「住まい手の手刻みへの理解とリスペクトを醸成することが必要だ」と指摘した。
同会の顧問を務める堀部さんは「かっこいい大工仕事」をテーマに話した。堀部さんは・・・
この記事は新建ハウジング2月20日号2面(2025年2月20日発行)に掲載しています。
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