3代続く大工工務店の渡邉工務所(福島県会津美里町)は、丸太の調達から製材・木材加工までを自社で行いながら、断熱等級6・耐震等級3(許容応力度計算)を標準仕様とする高性能住宅を手がける。2024年10月には、自社がつくる住宅の性能や世界観を伝えながら、課題としていた認知度向上を図ろうと、フルリノベーションした事務所兼ショールームをオープン。3代目で代表の渡邉和弘さん(建築士・大工)は、ハウスメーカーに押されがちな地域の住宅市場のなかで「地元の木と地元の職人により、量産タイプとは全く異なる“てしごと”の素朴な魅力をたたえながら、性能も劣らない家をつくれると1人でも多くの人に知ってほしい」と力を込める。【編集部 関卓実】
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フルリノベにより、自社が手がける住宅の性能や世界観(空間の魅力)を再現した事務所兼ショールームの内観・外観 |
同社は渡邉さんと渡邉さんの妻、両親の家族4人で営む地域密着の小さな工務店だ。「地域の人たちが快適に健やかに暮らせる家づくり」、「時を経るごとに味わいを増し、世代を超えて住み継ぐことができる家づくり」をコンセプトとして掲げ、地域に深く根差した経営を実践する。リフォームをメインとし、新築受注は年間1~2棟。渡邉さんは祖父の代から受け継ぐ技術力や製材・木材加工機をフル活用し、材料加工から設計・施工までの内製化と一貫生産を徹底することにより、「性能や意匠、素材感の全方位に優れる住宅を、できるだけコストを抑えて(坪100万円程度)地元の人たちに提供したい」と思いを語る。
リフォームでは構造材も製材
自社の敷地で、スギやクリといった地域材を丸太から常に一定量ストック。製材から天然乾燥、仕上げ加工まで全て社内で行う。床材や外壁材をはじめ間柱、垂木、根太、胴縁といった羽柄材に加えて、造作材や家具の製作に用いる幅はぎ材までつくる。構造材の製材・加工に関しては、数年前に外部委託(プレカット)に切り替えたものの、部材本数が限られているリフォーム現場などでは、いまも自社で製材することもある。
渡邉さんは、こうした独自のやり方により、地域材と職人技術の付加価値を、他と比較ができない(競合しない)レベルにまで高めたい考えだ。同社では・・・
この記事は新建ハウジング2月10日号3面(2025年2月10日発行)に掲載しています。
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