移住先として人気の山梨県丹波山村に、移住者の住まいの受け皿となる高性能な村営住宅3棟が完成した。切妻屋根と県産スギの無垢板で囲まれた外壁が周囲の景観に調和する。県内の超高性能住宅のつくり手として知られる天野保建築(富士吉田市)が大型パネル工法によって建築した。若者らの移住・定住を促進し、村民の豊かな暮らしを支える公共インフラとしての良質な住環境の整備に、地域工務店が培ってきた家づくりのノウハウが生かされた格好だ。【編集部 関卓実】
東京都の奥多摩エリアに隣接する人口500人の丹波山村は、1月発売の月刊誌『田舎暮らしの本』(宝島社)で発表された「2025年版 第13回 住みたい田舎ベストランキング」の人口5000人未満のまちランキングの若者世代・単身者部門で1位を獲得、「移住者増の人気地ベスト100」でも2位に選ばれるなど、移住者から人気の高い村だ。ただ、増加する移住希望者の受け皿となる住宅の供給が不足。そうした状況の解消につなげようと、村は子育て世代などファミリー向けの住宅3棟を整備した。
村内には工務店・住宅会社がなく、大工も不在と言われるなかで、住む人の安心・安全や快適・健康を担保しながら、省エネにも優れる高性能住宅を建設するために、村はプロポーザル方式によって知識・技術、ノウハウを持つ事業者の選定を進め、天野保建築に決定。設計・施工一括で発注した。工事費は3棟合計で約9000万円。
また、村は、災害時に応急住宅として活用可能な大型パネル工法などでつくる「モバイル建築」の“社会的備蓄”を全国の自治体に働きかける日本モバイル建築協会(東京都千代田区、長坂俊成代表理事)と包括連携協定を結んでいることから、今回の村営住宅の建設を通じて、大規模自然災害への備えの強化やレジリエンス性の向上も図る。
スケルトン・インフィルの 「ハーフ住宅」導入
標準仕様として大型パネル工法を採用している天野保建築の代表の天野洋平さんは、自社の限られたリソースで、かつ公共事業の厳密な工期(約4カ月半)を守りながら、高性能住宅3棟を同時に完成させるために、ウッドステーション(千葉県千葉市)が展開する大型パネルによるスケルトン・インフィル住宅「ハーフ住宅」を導入。以前にも山梨県内のハーフ住宅の建築でタッグを組んだことのあるサトウ工務店(新潟県三条市)の佐藤高志さんに設計を依頼した。
村役場庁舎に近く、保育所に隣接する約325㎡の敷地に新築した3棟は・・・
この記事は新建ハウジング2月10日号1面(2025年2月10日発行)に掲載しています。
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