国土交通省の中央建設業審議会が実施する「労務費の基準に関するワーキンググループ(WG)」で、職種ごとの労務費の基準(標準労務費)の作成に向けた意見交換を開始した。同WGは技能者の賃上げにつなげるため、発注者・元請・下請のそれぞれが適正水準の労務費を確保できる仕組みの構築を目指している。
職種団体との意見交換では、共通事項については日本建設業連合会(日建連)など4団体から、住宅分野では住宅生産団体連合会(住団連)、全国工務店協会(JBN)など4団体から意見を聴取する。
一人親方・零細企業への支援を
このうち住団連では住宅業界の傾向として、元請(ハウスメーカー)が作成した発注見積金額が一次下請(工務店)への発注金額となることが多いこと、一次下請は自らの必要な経費を確保しながら、二次下請(基礎工事店、屋根工事店など)に発注していることなどを報告。元・下間、下・下間の契約書に添付される見積書には、具体的な労務費や雇用に必要な経費(福利厚生費・安全衛生費など)が明記されることほぼ無く、小規模な工事店や一人親方が紙面による契約書を交わすことはまれだと説明した。
住宅分野で適正な労務費を確保するための提案では、①雇用する技能者に対する賃金を定めた雇用契約を行うこと、②偽装一人親方問題を解決すること、③労務費など必要な経費を記載した見積書を作成し、書面で請負契約を締結すること、③零細事業者や一人親方に対し、国が見積書のフォームや作成ソフトなどを提供(補助)すること―などを提示。さらに自力では見積書の作成が難しい工事店や一人親方に対して指導する機会を設けるべきとした。
個人向け工事も適正価格で
戸建て住宅などの個人の発注者(施主)に対しては、住宅の品質確保や安心できるアフターサービスには一定程度の費用が必要となること、工事費を極端に安く見せる悪徳業者の見分け方を周知すべきだと説明。そのためには、住宅業界が率先して情報発信を行う必要があると意見を述べた。
また、その他の団体からは、▽職種ごとに細分化しすぎず、労務費の基準をベースとして個々の契約当事者間で交渉・補正ができる形にすること▽住宅工事は野丁場工事とは異なる仕組みが必要▽競争させてはならない費用(確保すべき必要経費)を明確にするべき―などの意見が挙がった。
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