日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協、小野秀男理事長)は1月9日、第27回全国大会を東京都内で開催した。東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長・関谷直也教授、西垣淳子・前石川県副知事、お笑い芸人の安田大サーカス・団長安田さんの3人が講演。あわせて永年功労者表彰などを執り行った。
開会にあたり小野理事長は、首都直下地震や南海トラフ地震の規模・死者数の想定を紹介しながら、同組合設立の契機となった阪神・淡路大震災から30年後の今「自宅が倒壊して家族が亡くなるのは運のせいではない。一義的には“家長”の責任であり、その家に携わった工務店の責任だ」と強調。組合員らに「耐震社会を構築するために、皆様のお力を賜りたい」と呼びかけた。
小野理事長に続いて登壇した関谷教授は、2023年で発生から100年を迎えた関東大震災を例に「10年、20年というタイミングでは思い出すが、普段は災害を忘れて過ごしている」人間の心理を解説した。人は普段、明日地震が発生する、あるいは自分の生命を奪うような災害が起きる、とは考えない「正常化の偏見」が働くという。
しかしひとたび災害が発生すると、過度に不安を抱く「過大視の偏見」に捉われる。関谷教授は「人は災害やトラブルを意識し、忘れる、という繰り返しで生きている」としたうえで「普段からできるだけ安全な場所にいること、安全な場所をつくることが重要だ」と、住宅の耐震化を推し進めることが防災の大前提であることを訴えた。
能登半島地震の対応に当たった西垣前副知事は、能登半島の風景に根付いた「黒瓦と下見板の木造住宅」が、復旧・復興の過程で失われていることを憂慮。「黒瓦の家がある能登の未来を実現するには、個人の判断ではなく町ぐるみで住宅の耐震化を進める」必要性を説いた。
最後に登壇した団長安田さんは、阪神・淡路大震災の被災者でもある。友人が建物の倒壊で亡くなった経験から「僕らは建物が崩れないと信じて暮らしている。建築業界の方々にはしっかり崩れない建物をつくってほしい」と強く訴えた。
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