以前から松尾さんが必要性を説いている「看板メニュー(核)」について、工務店の現状はどうなのかをレポートしていただきました。
※本記事は新建ハウジング2023年9月10日号掲載の記事を再編集して再掲したものです。
工務店さんへの技術指導の中で、自社の「看板メニュー(核)」づくりをサポートしています。これは比較的最近始めたことですが、大半の工務店は、驚くほどこれがうまくできません。その理由は「同業他社のリサーチが決定的に不足している」、そして「施主側に立ったものの見方ができていない」。他にもいろいろあるかと思いますが、大きく集約するとこの2点が大半を占めていると考えています。
多くの工務店さんを指導してきた中で気づいたことをまとめていきます。まずは性能。これは高断熱、耐震等級3、高耐久、この3つが軸になるとお考えください。もちろん、高断熱といっても程度はありますが、お施主様の一次審査がG2になっていることが多いので、そこはクリアしておきたい…ということは散々申し上げてきました。この高性能の軸で行くと、圧倒的強者が一条工務店となります。高性能をうたっているだけだと一条工務店に勝つことはほぼ不可能です。
そこで、工務店さんが最も取り組みやすいのが自然素材。実際「高性能(とはいえUA値は一条工務店より劣る)+自然素材」の組み合わせは、今頑張っている工務店さんならたいてい取り組まれています。
ということは、一条工務店には勝てても、地場で頑張っている工務店との差別化にはなりません。プランの自由度も一条工務店にはないですから、差別化にはなりますが、地場の工務店との差別化にはなりません。ただし、許容応力度計算を行っているかどうかは「安全を担保した上での自由度」なのか「安全を犠牲にした上での自由度」なのかを分ける上では決定的な違いとなります。本来なら「高性能」をうたっている時点で、許容応力度計算はやっていると考えるのが妥当です。よって、プランの自由度はあまり大きな差別化とはなりにくくなってきています。
他にも、お施主様が工務店を決める際に重要視する項目は多々ありますが、中でも重要度が高いと考えるのは次の項目です。「建築条件付きでいい土地を紹介できるかどうか」「営業マンもしくは最初に対処してくれる人の能力」「金額(ただし、これは金額だけを絶対視することはなく、いわゆる「コスパ」=この物にしてこの値段、というところを重視)」「デザインおよび設計力」「アフターメンテ・保証体制」「会社の信用度(規模、歴史を含む)」などです。トップ営業マンの能力に頼るやり方は広げにくく、その人が辞めたときのリスクも大きいので再現性も低いですし、おすすめしにくいです。
アフターメンテ・保証体制の充実も中小工務店には簡単ではないと思います。土地の仕入れに関しては元々強い会社と弱い会社にはっきりと分かれますし、強い会社であっても土地に頼ると資金繰りはしんどくなりがちです。絶対的なコストだけを見れば、大量購入のメリットがある大手には絶対にかないません。これは高性能部門で圧倒的なコスパを誇る一条工務店でもそうですし、絶対的に安い飯田グループを相手にした場合でも同様です。
そうなってくると、中小工務店が差別化できる項目は、消去法でどうしても「デザインと設計力」に集約せざるを得ない実態が見えてくるのです。
そもそも、デザインと設計力は幅が広い分野なので、各社がこだわったとしてもこだわり方にはかなりの幅の広さを持ち得ます。また、インスタントなデザイン・設計力はカタログから選ぶだけ…のような感じでも成立することがありますが、年数を経過しても色褪せることのないデザイン・設計力は普段から目を養い、手を練っていないことには身につきません。
また、デザイン・設計をおろそかにしている会社ほど共通点を持っています。それは「とりあえず申し込み(もしくは仮契約)をしてもらえれば設計はあとでどうにでもなりますから」といったような感じです。
飲食で考えてもらえれば分かりますが、「うちなんでもつくれますから」という店でおいしい店はまずありません。30棟程度までの規模であれば、飲食店でいうと「〇〇市で細麺のとんこつラーメンだったらうちが一番!!」というところまで煮詰めて初めて、看板メニューとなり得ます。その棟数を超えてくると、ある程度の多様性が必要になり始めますが、30棟くらいまではきちんと自社の特徴を確立させる必要があります。
それはまず言葉で明確に定義し、そしてそのフレーズにおいては当該地域において、自他ともに認める絶対的な一番であるというところまで深掘りできている必要があります。言語化もできていないのに、社員、職人さんまで一体となってそこまで深掘りすることなどできるはずがありません。
まずは明確に言語化する。そしてその言語化したことをきちんとやり抜くことで、施主側から見て「言行一致」していること、これがどんな宣伝広告をやるよりも圧倒的に先に取り組まなければならないところです。
※本記事は新建ハウジング2023年9月10日号掲載の記事を再編集して再掲したものです。
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