公正取引委員会と中小企業庁による企業取引研究会はこのほど、下請法改正に向けた「企業取引研究会報告書」(PDF)をとりまとめて公表した。取引慣行の見直しや適切な価格転嫁の環境整備、下請代金の支払条件、「下請」という用語の是非などについて盛り込まれている。1月23日までパブリックコメントを実施した後、下請法改正案の検討に入る。
その前提として、わが国の経済は長期にわたってデフレ状況にあったことから、コスト上昇局面でも価格転嫁が困難であり、取引時には立場の弱い中小企業・小規模事業者などに負担がかかる構造となっていることを挙げている。
ガイドラインに事例を明示
そこでデフレ型商慣習からの脱却に向け、前回の改正から約20年が経過した「下請法」の改正を検討。下請事業者からの価格協議の申出に応じなかったり、一方的に下請代金を決めて下請事業者の利益を不当に害したりするなどの買いたたき行為への規制を強化する。さらに、買いたたき行為の事例を優越的地位の濫用規制に関するガイドラインに明示することで、サプライチェーン全体での価格転嫁を図る。
下請代金の支払い方法については、紙の有価証券である約束手形を廃止する方向で検討。金銭以外の支払手段(電子記録債権、ファクタリングなど)についても、支払期日までに下請代金の満額に相当する現金と引き換えられる場合のみ認めることとした。振込手数料を下請事業者に負担させる行為については、合意の有無にかかわらず禁止する。
「下請」に代わる用語も検討
「下請」という用語については、時勢に沿わなくなっている一方で、広く社会に定着していることから、政府側で既存の法令も参考にしつつ、よりふさわしい用語に変更する考え。その際、受注者と発注者は互いに協力しながら、良い商品やサービスを顧客に提供する共働関係にあることを念頭に置く。
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