2024年1月1日に発生した能登半島地震の被災地でも、工務店の手による応急仮設住宅が多数建設された。しかし中心となったのは県外の工務店。なぜ県外なのか―そう思った人も少なくないはずだ。(一社)全国木造建設事業協会(全木協)の主幹事工務店を務めたエバーフィールド社長・久原英司さんにその経緯と、工務店が考えるべき「地域」の捉え方を聞いた。(聞き手=新建ハウジング編集長・荒井隆大)
—応急仮設住宅の経緯を改めてお聞きしたい。熊本の工務店がなぜ石川で仮設住宅を建てることになったのか。
1月1日の地震発生後、内閣府から全国木造建設事業協会(以下全木協)に要請があり、5日には石川県庁を訪問して打ち合わせを重ねた。県からの建設要請戸数は約500戸。石川にはJBN・全国工務店協会の連携団体も全木協の石川県協会もなかったため、まず富山の連携団体と工務店に協力を打診し、了承を得た。
しかし、主幹事工務店のキャパシティや事務局の体制などの問題から、富山では80戸が限度で、石川県庁からあとは全木協本体でお願いできないかという相談があり、急遽、全木協の大野年司代表理事(当時。以下同)、安成信次建設統括副本部長、坂口岳事務局長と緊急の会議を開いたところ、過去に500戸以上の建設を手がけた経験があるのはエバーフィールドだけだった。
でも、ここで断ったら全木協の信頼が失われかねない。「やらない」という選択肢はあり得なかった。問題は「どうやるか」しかなかった。
—JBNの連携団体が石川になく、災害協定も締結していなかったことの影響は大きかったか。
熊本地震の際も、県と災害協定は結んでいなかった。一方でJBN連携団体として(一社)KKN(熊本工務店ネットワーク)が既に存在していたおかげで、スムーズに応急仮設住宅の建設に取り組むことができた。
石川では既存の団体があったので、仮に新しく団体をつくったとしても関係性が問題になる。実はKKNも、既存の団体に対して工務店だけの団体をつくった、という経緯があるが、熊本と石川では工務店・住宅事業者の規模感も異なるし、一概に同じようにできるとはいいがたい。
—仮に連携団体が事前にあったとして、今回のケースには対応できただろうか。
北陸地方の各県が一丸となって取り組んだならともかく、石川1県だけでは工務店の絶対数が不足している。他県の工務店が応援に行かずに、今の戸数を達成するのは非常に困難だっただろう。
逆に考えれば・・・
この記事は新建ハウジング1月10日号part2 10・11面(2025年1月10日発行)に掲載しています。
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