建築基準法改正による4号特例縮小・壁量基準見直しを見据え、構造計算に取り組む工務店も増えているよう。しかし、果たして誰しもが「正しく」構造計算できているのか。20年以上に渡り木造住宅の構造を考え続けるエヌ・シー・エヌ代表取締役の田鎖郁男さんに、木造住宅の構造計算に潜む問題を語ってもらった。(聞き手=新建ハウジング発行人・三浦祐成)
三浦 2025年4月には建築物省エネ法と建築基準法が改正される。
田鎖 結論を先に言えば、確認申請における変更点は、大まかには省エネ基準への適合判定と構造の確認審査、この2点だけ。
省エネ基準への適合を判定する手法は、仕様規定と性能規定の2つがある。仕様規定は確認審査機関が、書類で仕様をチェックする。性能規定は断熱性能と一次エネルギー消費量を計算してその結果を性能評価機関で審査してもらい、確認申請機関に提出する。
言ってしまえばこれだけのことだが、性能規定上、正しく評価されていない断熱材や設備(木質系断熱材や薪ストーブなど)を使うと、UA値やBEIが想定よりも悪くなる恐れがある。また、性能規定だと性能評価機関で省エネ適判を受ける必要があるので、審査機関の解釈との間に差が出る可能性もある。
三浦 構造、つまり建築基準法の改正ではどのような変化があるか。
田鎖 仕様規定では壁量基準が改正されるが、1年間の猶予期間が設けられたから大きな問題は起こらないだろう。対してN値計算や四分割法は、準備していない工務店もまだまだ多いと思われる。
また壁量基準は建築基準法施行令第46条で規定されているが、壁の解釈に対する理解が十分でないという問題もある。袖壁(910モジュールの半分である455㎜の壁)の評価方法、上に欄間があるなど土台や梁に到達していない壁、換気扇の穴が開いている壁―これらを「壁」とみなしていいのか。あるいは鉄骨のらせん階段がある住宅は混構造とみなされるのか。今まで確認申請で審査を受けてこなかった結果、確認審査機関との齟齬や思い込みが発見できていない。
工務店も審査機関も構造計算は未知の世界
三浦 構造計算に取り組む工務店も増えているが。
田鎖 むしろ構造計算が最大の問題。既に構造計算をやっている工務店でも、4号建築物の場合は確認申請の際、計算書類を添付していない。弊社は20数年間かけて、構造の解釈について確認審査機関と対話し続けてきたが、一般的な在来工法の構造計算はその結果を正しく判断されたことはないと言ってよい。
木造の構造計算の基本ルールは・・・
この記事は新建ハウジング1月10日号part2 6面(2025年1月10日発行)に掲載しています。
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