耐震等級3の家づくりが普及し、構造計算(許容応力度計算)への関心も高まりつつある一方、物価の高止まりが高性能な住宅の普及を遅らせている。既存住宅も含めてより構造安全性の高い住宅を広めていくために、工務店や業界はどう変わるべきか。
おなじみM’s構造設計/「構造塾」の佐藤実さんに聞いた。
—木造住宅の構造。という観点から2024年を振り返るとどんな1年だったか。
2024年は活動が第3フェーズに入ったと言える1年だった。木造住宅における構造の重要性を伝えるのが第1フェーズで、第2フェーズでは熊本地震で明らかになった耐震等級3の必要性を普及、啓発してきた。
24年はそこからさらにもう一歩進み、耐震等級3は当たり前として、それがコストアップになるという固定観念を払拭することに努めてきた。耐震等級3の設計に、構造の安定とコストダウン・経済設計が織り込まれないと、今以上の普及は望めないだろう。
最近の「構造塾」では「構造計画ルール」、つまり耐震等級3を経済的に実現するための間取りづくりのルール策定に力を入れており、実際に需要も増えている。間取りから考えないと、構造の安定と経済設計が実現できない、という地点にたどり着きつつある、という印象だ。
その次の段階が構造計算の内製化。自社の構造計画ルールに基づいてつくった間取りを、自ら計算して最適解を出そう、となれば内製化が並行する。ここに行き着き始めている工務店は早い。
実は多い「構造の無駄」
自由や非合理がその要因に
—経済設計への関心の高まりは、やはり資材高騰の影響か。
もちろんこれだけ資材の価格が上がって、人件費も上昇しているから経済的な設計をしたい、というニーズもある。一方、耐震等級3の必要性を感じて、外部に構造計算を委託してみるとコストアップになってしまうから、というパターンもある。いずれにせよ、数年前から提唱してきた「構造の無駄をなくすとコストダウンできる」が、ようやく業界に響き始めたのだろう。
—「構造の無駄」とは具体的にどんなことか。
わかりやすいのは、上下階の柱がずれているため大きな梁が必要になっている、とか、基礎の四隅が柱になっておらず基礎梁がやたらに多い、という事象だ。意匠やコストの問題からなのか、凹凸の多い形状にしたり、リビングの中心に2階を配置して下屋をつくったりする例も見られる。
その原因は・・・
この記事は新建ハウジング1月10日号新春特集号part2 2~3面(2025年1月10日発行)に掲載しています。
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