地域工務店は、厳しさを増した2024年の住宅市場にどのように向き合い、2025年を地域でサバイブするために何を考えているのか――全国の工務店経営者が考える57の“打ち手”から、テーマ別にひとつピックアップして紹介する。(その他の回答は新建ハウジング2025年新春特集号/Part1に掲載)
Q1.貴社にとって、2024年はどんな1年でしたか。 Q2.貴社が考える、2025年の「打ち手」を教えてください。 |
【ブロック①】 ひとを大切にする | |
設計・施工の一体化を深化
次世代大工を育成、新築・リノベ問わず最適解を提案 |
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[静岡県] 扇建築工房 |
代表取締役 佐藤 友也さん |
A1.挑戦と成長の1年だった。持続可能な住まいづくりを進化させるため、設計・施工の一体化を深化し、価値を創造する提案力をさらに高めた。また、社員間の協力体制を強化し、既存顧客とのつながりを意識した取り組みを進めることで、社会的価値の提供を一層意識する年となった。一方で、変化への対応や運営面での課題も浮き彫りとなり、組織としての柔軟性と持続可能な経営の必要性を再認識する機会となった。 | |
A2.新築・リノベを問わず、住居を構える方法において総合的な最適解を提案できるポジションを目指す。そのために、既存の枠にとらわれない次世代の大工を育成し、生産力を高め、持続可能な体制を整える。また、縮小する市場におけるリスクヘッジに取り組むと同時に、さらなる収益性の向上を図る。 | |
【ブロック②】組織をより善く | |
全社員によるチームプレー体制を確立
仮説・実行・検証を繰り返し企業価値を向上 |
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[岐阜県] Livearth リヴアース |
代表取締役 大橋 利紀さん |
A1. 2024年のLivearthのテーマは「ひとりひとりが活躍する」で3つの内容に注力した。①「チームプレー×価値創造」②「賃金×働き方×やりがい」③「利益=価値を高める」。トップダウンではなくチームプレー元年として「ひとりひとりが活躍し、各自が最前線で価値を創造する」を試行錯誤しながら実践する年だった。売上ベースでは前年比110%、集客数も年間を通じて比較的、安定状態と言える。 | |
A2. 2025年のLivearthのテーマは「全員参加のチームプレーで活躍する」。チームプレーをさらに進めて、マネージャーとチーフを軸に全社員でのチームプレー体制の確立を目指す。全社員が「賃金×働き方×やりがい」の総合力の向上と、生産性の向上との両立を目指す。経営目線では、継続的に仮説と実行と検証を短期間で繰り返しながら企業価値向上を進め、集客・売上・利益の安定化を進めたい。 | |
【ブロック③】仕事のあり方を見直す | |
大工の多能工化を推進
集客AIを活用して効果的な広告戦略 |
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[鳥取県] 福山建築 |
代表取締役 松本 晃一さん |
A1. 社内改革の年。労働生産性を上げるための前段階として、顧客管理・現場管理のシステムの入れ替えを準備。断熱などリフォームの現場技術を高めながら、職人に対して技術指導するなど新しい挑戦だった。営業のスキームも見直し、リードタイムの短縮を図り、ホームページ改善の準備も行う年だった。 | |
A2. 経営事業計画で、新築は前年比2棟増、リフォームは前年同程度を見込む。 経費削減策としては、人員の見直しと生産性向上、原価管理・発注書管理の強化を実施。集客AIにより、契約顧客やタイプ別の集客内容を分析して自社のペルソナに置き換え、複数種類広告を同時にアプローチ(運用開始中)。 設計の内製化を強化するほか、リフォームの施工でも社内の大工が現場監督も兼任する内製化を促進。4月からは水道工事のも内製化も予定しており、大工の多能工化も推進する。 | |
【ブロック④】「つくる」を極める | |
取り組みたい建築が明確に
超高性能はそのままに素材や質感にこだわる |
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[三重県] 棲栖舎桂 |
代表取締役 桂山 翔さん |
A1. 例年と比べると静かな年だった(笑)。やはり問い合わせ等の新規顧客からのアクションは例年より少なめ。契約済みでお待ちいただいていた方々を粛々と進めながら、例年と比べて少なめではあるものの会社の方針と合ったご要望の新規顧客からの問い合わせが増えてきているので、打ち合わせを進めている。 | |
A2. 取り組みたい建築が明確になってきた。木と土という昔からある素材を大量に使って建築をつくりたい。新建材はもとより、断熱も含めて石油由来の製品に頼らず、なるべく地元にある素材を生かした建築としたいし、そういった建築に年々興味が高まり、着工する計画を進めている。これまで取り組んできた性能の数値は超高性能なまま、素材や質感にこだわった地元の建築会社にしかできない建築に取り組んでいきたい。 | |
【ブロック⑤】工務店らしい多業化・多角化 | |
非住宅・不動産など堅調でポートフォリオ変化
新築住宅は分譲を拡大、賃貸・買取再販にも注力 |
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[東京都] 相羽建設 |
代表取締役 相羽 健太郎さん |
A1. 新築住宅は減少。非住宅施設、リフォーム、不動産などが堅調。自社のポートフォリオ(事業構成)が大きく変化する1年となった。 | |
A2. 新築住宅においては、分譲の割合を増やす。また協働分譲やコーポラ分譲、定借分譲など、大手とは異なる分譲を展開する。併せて分譲から派生させた規格型住宅の開発も行う。その他としては、公民連携、賃貸事業、買取再販事業、多拠点居住への対応などに注力していきたい。人材については、現場監理者の育成・採用、社員大工について力を入れたいと考える。 | |
【ブロック⑥】新しい一歩を踏み出す | |
本社移転により業務効率を向上
アパレルや都市農園、木造賃貸ビル展開 |
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[静岡県] 石牧建築 |
代表取締役 石牧 真志さん |
A1. 新規事業への展開を計画する中で浮き彫りになった、以前の経営計画の中で進めてきた内製化による社内のリソース不足を改善するための業務の見直しに注力する1年とった。 | |
A2. 2025年の事業展開として、本社移転による業務効率向上、地域資源を活用したアパレル事業の展開、都市農園のサブスクリプションビジネス、環境配慮型の木造賃貸ビル事業という4つの柱を計画している。 | |
【ブロック⑦】もっと知ってほしい | |
設計・施工の一体化を深化
次世代大工を育成、新築・リノベ問わず最適解を提案 |
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[鹿児島県] PASSIVE STYLE |
代表取締役 馬場 龍仁さん |
A1. 2024年はスタッフも増え、事務所も増築して事業拡大の準備ができた年だった。ただ、当初予定していた宿泊型モデルハウスに着手できなかったので、2025年は必ず着手する。来場されるお客様も、だいぶ高性能住宅の認知度が上がった気がする。しかし、鹿児島ではまだまだローコスト住宅の施工棟数が群を抜いており、まさに方向性が二極化へと進み始めた年でもあった。 | |
A2. 集客はSNSを中心に、家づくり世代であるSNS世代へのアプローチを積極的に仕掛けていく。ただ、SNSをやっていない家づくり世代も存在するので、そちらへの戦略として、わずかながらのTV広告も併用していく。また新築だけでなく、断熱改修は絶対数がかなり多いうえ、問い合わせ自体も多くなっているため、そちらの層へも発信して受注につなげていけたら。 | |
【ブロック⑧】世の課題に立ち向かう | |
被災地で地元に対して「我々ができること!」
地震対策と省エネ化が最重要テーマ |
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[石川県] ひまわりほーむ |
代表取締役 加葉田 和夫さん |
A1. 能登半島地震 によって、心折れながらも地元に対して「我々にできること!」を探し続け、社員にはたくさん負担をかけながらも1年を過ごした 。 | |
A2. 地震による被災者のことを思うと、地震対策と省エネが最も重要なテーマ。耐震と2030-50省エネ化に取り組む。 | |
【ブロック⑨】ご縁を大切に | |
設計やものづくりの楽しさ忘れずに
厳しい状況下でも顧客と共に家づくり楽しむ |
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[東京都] 古谷野工務店 |
代表取締役 古谷野 裕一さん |
A1. 上昇を続ける物価や工事費の変動などにより、私どももお客様も多くの困難に直面した1年だった。 | |
A2. 今後も続くであろう物価の上昇や法改正など、急速に変化する社会の中で、より合理的な仕事が求められる時代が続くと予想される。そのような状況下でも、設計やものづくりの楽しさを忘れず、知恵と工夫を生かしながら、お客様と共に家づくりを楽しむ姿勢を大切にしていきたいと考えている。 |
この記事は新建ハウジング1月10日号part1 7〜9面(2025年1月10日発行)に掲載しています。
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