2024年は人命や暮らしを脅かす災害が多発し、住宅・建築物の安全性にも改めて注目が集まった。4月には改正建築基準法・建築物省エネ法が施行され、性能の底上げも進む。昨年11月に就任した中野洋昌・国土交通大臣はこのほど、建設・住宅専門紙の共同新春インタビューに答え、災害対策や脱炭素に向けた方向性を示した。
―能登半島地震が発生して1年が経つ。明らかになった課題と対処策は。
能登半島地震対応の初動期においては、通信やライフラインの途絶などさまざまな課題があった中で、被災状況の把握や被災者支援、応急復旧などの災害対応を実施した。
得られた教訓を踏まえ、被害を防止・軽減するためのインフラ整備・耐震化や適切な維持管理を着実に推進するとともに、TEC-FORCE などの災害支援体制・機能の充実・強化を図ることによって、衛星通信などを活用した迅速・的確な情報収集・共有・発信、陸海空が連携した啓開体制、物資輸送の確保、国交省の資機材などを活用した被災者支援などに、全力で取り組んでいく。
―令和7年度の当初予算案について。
一般会計における国土交通省関係の令和7年度当初予算案は国費総額5兆9528 億円で、うち公共事業関係費は5兆2753億円、直轄・個別補助・交付金などの一般公共事業費については、前年度予算からの増額となる5兆2336億円を確保している。また、令和7年度当初予算と一体で編成するとされている6年度補正予算においては、国費総額で2兆2478億円、うち公共事業関係費は1兆9126億円を確保した。
また、防災・減災、国土強靱化の推進のために必要な予算として、6年度補正予算では2467億円の「国土強靱化緊急対応枠」と、今年度から新たに、能登半島地震等の教訓を踏まえた緊急性の高い防災・減災対策の経費に活用するため、2183億円の「緊急防災枠」を確保した。加えて、7年度当初予算においても、防災・減災、国土強靱化の推進のために必要な予算として、昨年度を上回る3兆5472億円を確保している。
―改正建築物省エネ法の円滑な全面施行に向けた準備・対応の状況は。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、日本のエネルギー消費量の約3割を占める住宅・建築物分野の省エネ化を進めることは重要な課題だ。このため、2022年に建築物省エネ法を改正し、今年4月から原則全ての新築住宅・建築物について省エネ基準への適合を義務づける。
改正法を円滑に施行するためには、建築士、施工者および審査者のそれぞれが省エネ基準や手続きについて習熟することが重要であることから、国土交通省においては、改正内容の周知・普及に鋭意取り組んでいる。
具体的には、関係業界団体で構成する改正法の円滑施行連絡会議を4回開催し、緊密な情報共有や意見交換を実施した。また全国の建築士事務所や建設業許可業者の約20万社に対し、改正法の概要や、説明会・講習会の案内等を同封したダイレクトメールを合計3回送付し、設計者・審査者向けの説明会・講習会も全国47都道府県で合計143回開催した。その動画もオンラインで公開している。
省エネ基準などを分かりやすく解説する各種マニュアルや手引きも整備し、公表しているほか、各業界団体や都道府県による周知や技術力向上に係る取り組みに対する支援も行っている。
さらに、今年1月からは全都道府県において建築士向けのサポートセンターを開設し、提出書類や記載内容が分からない場合の個別相談等に対応する。引き続き、関係団体とも連携しながら、改正法の円滑施行に向けて取り組んでいく。
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