新年、あけましておめでとうございます。
早いもので、そろそろ皆様のお手元に2025年新春特集号が届く時期となりました。今年の新春特集のテーマは「再考・地域密着」です。
工務店にとって“地域密着”は金科玉条でした。地域の特性に合った家を、地域の人・材料でつくり、地域に貢献し、地域から必要とされる存在になる―大変ありきたりな表現ですが、おそらくほぼ全ての工務店経営者は心の奥底にそんな思いを持っているに違いありません。「商圏は1時間以内です」「エリア外からの問い合わせはお断りしています」といった常套句は、地域密着こそが工務店だという概念を端的に表しています。
上記のような地域密着のスタンスはもちろん間違いではありませんし、これからも工務店にとって大変重要であることに変わりはありません。
しかし、社会情勢や住宅市場の変化によって、地域密着のあり方も変化しています。もしかすると、工務店が工務店たる所以であるはずの地域密着も、本紙発行人・三浦祐成の言う「ちょんまげ」のひとつなのではないか―そう感じる機会も増えました。
直近では、物価上昇に伴い住宅価格が高騰したため、特に地価の高いエリアでは戸建て住宅を取得するハードルがぐんと上がっています。そのため、戸建てを求めて市街地ではなく郊外を検討する生活者も増えており、実際に工務店からは「従来の商圏の中でも遠いエリアや、その周辺の顧客が増えてきた」という声も耳にしました。
また、SNSやYouTubeで発信していたら、それを見た遠方の生活者から「ぜひ御社で家を建てたい」と問い合わせが舞い込んだりするケースも珍しくはなくなっています。
これが10年前であれば、どんなに熱意のある相手であったとしても断る工務店がほとんどだったでしょう。しかし、今ではビデオ会議、メール・メッセージアプリなどを使って対面せずに顧客と打ち合わせをし(熱心さのあまり、数時間かけて来社する顧客もいるようですが)、施工管理もデジタルツールを駆使すれば、現場にほとんど行かなくても問題はありません。
普段の商圏とは周辺環境や規制が異なるという難しさもあります。しかし、従来の1時間圏内を超える範囲に商圏を拡大することは、今や極めて現実的な戦略と化しています。
一方で、商圏をより絞るというパターンもあり得ます。地域密着の度合いを強める、とでもいえばいいでしょうか。
一定の社歴がある工務店であれば、少なからずオーナー(既存の顧客)がいます。どんな住宅でも、時間が経てばメンテナンスやリフォームの需要が発生します。つまり、工務店のニーズは絶えず発生しているわけで、これを逃す手はありません。2代、3代と続いている工務店なら、大規模な性能向上リノベーションや建て替えの受注も狙えます。リフォーム・リノベについては、補助金も追い風となることでしょう。
その先には、住宅を手放したいニーズに対して、リアルエステイトビルダーとなってかつて自社で建てた住宅を、自社で手を入れて流通させるという、究極のアフタービジネスも成立するはずです。
あるいは賃貸住宅、店舗や事務所など、戸建て住宅以外のニーズが、実はあなたの周りにたくさんあるかもしれません。いずれにせよ、今以上の”超“地域密着は、これまで培ったものづくりの力や信頼、 人脈をフルに活用する契機になるでしょう。
さて、読者の皆様にとっては釈迦に説法のような内容になってしまいましたが、2025年は海外情勢の変化や、続くインフレ、金利上昇、4月に控える法改正に伴う混乱など、さまざまな“逆風”も予想されます。
私たちも、厳しいニュースに接する機会が、今以上に増えるのかもしれません。ですが、これだけ大手ハウスメーカーがあるにもかかわらず工務店が一定のシェアを占め続けているのは、工務店が地域や社会から必要とされている証拠です。
新建ハウジングは、2025年も工務店が世の中から必要とされる存在であり続けられるよう、微力ではありますが応援していきます。本年もご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願いいたします。
新建ハウジング編集長 荒井隆大
荒井隆大 新建ハウジング編集長 |
1985年新潟県生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。工務店業界紙の記者、住宅雑誌の編集部を経て2019年からフリー。新建ハウジングプラスワン(冊子版)を中心に工務店・住宅関連事業者の取材・執筆に関わる。21年新建新聞社に入社。24年9月より現職。得意分野はエコハウス、住宅行政。 |
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。