新建ハウジングは12月23日、「住宅産業大予測フォーラム2025」(特別協賛:アンドパッド)をオンラインで開催した(一部限定で会場参加)。“新築再興”と“V字回復”をテーマに掲げ、全国の工務店経営者らに家づくりや経営の方向感とヒントを示した。
基調講演では、オーダースーツSADA社長の佐田展隆さんが、私的再生という辛酸をなめ、修羅場をくぐり抜けて3代続く家業にカムバックし、4代目として新たに小売業を始めてフルオーダースーツのチェーン店舗数・国内トップを誇る企業へと成長を遂げたストーリーを語り、ポイントを解説。
佐田さんは、成長要因として①間に流通を1社も介さない工場直販体制によるコストダウンと価格破壊、②1人1人の顧客の体型に合わせてオリジナルのパターン(型紙)を起こす真のフルオーダー技術、③ニッチ市場における“ダントツトップ”のポジションの確立―の3点を挙げた。
佐田さんは、自身の“仕事術”として「思い立ったら即行動する出足の早さ、まずは質より量を追う手数の多さ、PDCAのサイクルを高速で回す―の3つを大切にしている」と紹介。「オーダースーツの着心地と楽しさで日本のビジネスシーンを明るく元気にしたい」とし、「スーツを着る人で知らない人はいない会社を目指す」とビジョンを語った。
続くアンドパッドとのコラボセッションには、高垣工務店(和歌山県田辺市)から社長の石山登啓さんと常務の山本有輝さん、事業部長の西本由紀子さんの3人が登壇。ANDPADのDXツールを活用して業績(新築受注)をV字回復させた事例を紹介した。高垣工務店では、2021年に年間受注30棟の5割を担うトップセールスの営業担当者が退職したことにより、翌22年には同16棟と受注が半減。
しかし、ピンチをチャンスに変える発想で、ANDPADによって業務の徹底的なデータ化と定量化に取り組み、営業プロセスの仕組み化と見える化を実現。それにより、23年には新築受注27棟へとV字回復を果たした。
石山さんは「営業が属人化してしまっていたことや営業と人材教育・育成の仕組みがないことを思い知らされた」と当時を振り返った。営業を統括する山本さんは「受注の根拠も失注の要因も明確となり、格段に計画が立てやすくなった」と効果を挙げ、今後は「スターがいなくても、誰もがコンスタントに受注できる体制を構築していきたい」と抱負を語った。
西本さんは「実はデータは苦手だったが、実際にやってみると、社員共通の“言語”や“ものさし”になるということが理解できた」とし、「それにより自分の成長だけでなく、部下とのコミュニケーションや関係性の質の向上にもつながり、人材の教育・育成にも寄与している」と話した。
フォーラムの締めくくりでは、新建ハウジング発行人で12月20日発刊「住宅産業大予測2025」著者の三浦祐成が登壇。同著で2025年に工務店が取り組んでほしいメインテーマを新築再興とした理由について、戦略的にリフォーム・リノベなどストック(既存住宅)ビジネスへとシフトできるのなら問題ないが、「ただ新築が取れないからという理由で移行すると“総崩れ”になってしまうリスクがある」と指摘した。
若者減少・高齢者増加、新築減少と改修需要の増加、原価・地価・人件費・金利の上昇、所得・購買力の格差拡大といった「インフレ&人口動態がもたらすインパクト」は避けられないとし、「2025年をサバイブするためには、固定観念や常識、古くなったやり方を捨て去る“ちょんまげ ”落としが必要だ」と訴えた。
具体的には分譲事業やスケルトン&インフィル住宅、木造非住宅などへの取り組みを挙げた。
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